「ムスリム同胞団が政党結成・コプトも抱え込む」

2011年5月21日

 エジプトのムスリム同胞団が、政治に本格的に乗り出すために、政党を結成した。これまでも、ムスリム同胞団のメンバーは、同組織の名前を出さずに、各種組合の代表という形で、選挙に立候補し、国会議員になっていたが、今回は正式にムスリム同胞団の政党として、立候補することになる。

 その結党に向けて、8821人が署名し、うち978人が女性党員、コプト・キリスト教徒も93人が、この新政党に参加している。つまり、ムスリム同胞団は宗教色を弱め、政治政党色を強くしたということだ。

 それでは、ムスリム同胞団は今後、宗教的役割は止めるのか、というとそうでもない。ムスリム同胞団によって結党された自由公正党は、あくまでも政治に専念し、ムスリム同胞団はこれまでと同じように、宗教・社会福祉活動を行っていくということのようだ。

 このムスリム同胞団が結成した自由公正党は、副党首にコプト・キリスト教徒のバフィーク・ハビーブ氏を選出している。このことは、ムスリム同胞団が今後、エジプトの政治に大きく乗り出していくことを、意味しているということであろう。

 自由公正党の結党により、ムスリム同胞団は政治的なイニシャチブを執ろう、としていることはよく分かるが、だからと言って、ムスリム同胞団の性質を、根本から変えることにはならないだろう。日本の創価学会が政治の世界に進出するときに、公明党を設立したが、その公明党が創価学会との関係を、弱めたわけでもないし、公明党が創価学会の基本理念から、外れたこともないのと同じであろう。 

 今回のムスリム同胞団による自由公正党の結党と、コプト・キリスト教徒の同党への勧誘は、あくまでもエジプト社会に対し、ムスリム同胞団が様変わりをしている、というイメージを、作るためのものではないのか。

 エジプト社会のなかには、ムスリム同胞団の宗教的色彩が、自由公正党の政策の上で、反英されるのであれば、支持できないと考える世俗派や、穏健イスラム教徒は少なくないからだ。

 果たして、ムスリム同胞団による新党結成(自由公正党)と、その新党へのコプト・キリスト教徒の抱きこみは、一般のエジプト人イスラム教徒を、納得させるものとなるのだろうか。

 これと同様に、ムスリム同胞団の青年層は、より穏健な活動に切り替えて行き、より多くの大衆を抱きこんで、いかなければならないと考えている。それに加え、近く実施されるであろう(?)大統領選挙には、ムスリム同胞団のメンバーである、アブドルモナイム・アブドルファットーフ氏が、ムスリム同胞団の『大統領選挙には立候補者を立てない』という方針に逆らって、立候補することになっている。こうした動きは、ムスリム同胞団がエジプトの政界で、権力を握っていく可能性が高まったことによって出てきた、内部分裂の兆しではないのか。