アラブ諸国の報道は、ウサーマ・ビン・ラーデンの殺害ニュースを、軒並みに取り扱っている。その取り扱い方にはいろいろあるが、なかには、殺害された人物が偽者であり、身代わりだという説もある。
かつて日本でも、源義経が平泉の戦いで死亡したというのは嘘で、彼は大陸に渡り、チンギスハーンになったのだ、という小説があった。無理もなかろう。彼ほどの著名な人物ともなれば、そう簡単に死んで欲しくない、という感情を抱く人は少なくなかろう。
ウサーマ・ビン・ラーデン殺害情報に関連し、マレーシアにいる友人から興味深いメールが届いた。彼は以前、サウジアラビアに留学していた人物であり、サウジアラビアの国内状況については、一定の知識を持っている。
そのAさんは今後、想定される報復は、二つあろうというのだ。
1:首領を失ったアルカーイダのメンバーによる報復攻撃。
2:サウジアラビアに居住するウサーマ・ビン・ラーデンの親類縁者による報復。
同時に彼は、アラブ人の血族の誇りの高さと、結束の強さを、ほかの例を挙げて説明してくれた。1979年にサウジアラビアのメッカで、カーバ神殿を占拠して、サウジアラビア政府に対抗して立ち上がった、ジュハイマン・アルオタイビという若者がいた。彼はサウジアラビアの王家が、腐敗しているとして、反政府の戦いに立ち上がったのだが、サウジアラビア政府はこのアルオタイビの反乱を、自国の軍隊では押さえ込むことが出来なかった。
そこで止む無く、フランスの特殊部隊をメッカに投入して、解決したという情報が流れた。そのことは後に、イスラムの聖地に異教徒を入れたということは、イスラム法に反するということで、非難されることとなった。
そのアルオタイビ族の一員が、私の友人であるAさんとクラス・メートであることから、何気なく彼に『君はサウジ人だろう?』と質問したところ、即座に『俺はアルオタイビであってサウジ人ではない。』と否定したというのだ。
そして、このジュハイマン・アルオタイビ氏の一族の人物は『この事件は部族員全てにとって、何時までも忘れられないことになる。』と語ったというのだ。つまり、アルオタイビ一族にとっては、何時の日にか、サウド王家に対し、復讐をするだろうということだった。
同様に、今回アメリカ軍がウサーマ・ビン・ラーデンを殺害した結果、ビンラーデン一族はアメリカに対し、あらゆる手段を使い、何時の日にか、報復をする可能性が高い、ということではないか、とAさんは書いてきた。