最近になって、イランのアマハド・ネジャド大統領の立場が、不安定になってきているという情報が、飛び交い始めている。もしそうだとすれば、世界でも第3位の石油産出国であることから、座視するわけにはいくまい。
実際のところはどうなのかを探ってみると、アハマド・ネジャド大統領の地位が、不安定になってきたと考えられるのは、イランの最高権威者であるハメネイ師との関係が、危ういものになってきているからだということだ。
最近アバダンの製油所で起こった爆発も、石油相不在の中で、工事を急がせられた結果だ、と語る者もいる。
それは、アハマド・ネジャド大統領がハメネイ師の許可なく、単独で石油相を首にし、別の人物を据えようと思ったことから、顕著になってきたということだ。本来であれば、議会にかけるか、閣内で話し合うことが必要であるとともに、ハメネイ師にお伺いを立てるべきであったのであろう。
こうしたアハマド・ネジャド大統領の横暴ぶりは、イランの各種センターでも話題になっており、種々の機関が調査しているということだ。例えば、宗教賢人会議などは、その最たるものであろう。
あるイラン問題専門家に言わせると、アハマド・ネジャド大統領はハメネイ師との関係を悪化させたことで、すでにレイム・ダッグ状態になっている、ということだ。
またあるイラン問題専門家は、アハマド・ネジャド大統領はハメネイ師の実力を、過小評価しているのではないか、ということだ。確かに、アハマド・ネジャド大統領は地方を訪問し、各種の援助を地域の要望に沿って行っており、貧民層からの支持は強いが、イランの政治権力は全く別のところに、存在することを忘れているのではないだろうか。
このハメネイ師のアハマド・ネジャド大統領に対する、反撃が始まったのは、ヘイダル・モスレヒ内務相を更迭にしようと思った、4月からだということだ。ハメネイ師は当然、この考えを拒否したが、その後、アハマド・ネジャド大統領は公衆の面前に、当分の間姿を現さなくなっていたし、内閣会議すらも欠席していた、ということのようだ。
アハマド・ネジャド大統領が義兄弟エスファンデアル・マシャエイ氏を重用したことも、イラン国内では批判の対象となっている。そのことに加え、石油の権限を手中に収めようとすれば、当然の帰結としてハメネイ師の逆鱗に、触れることになろう。それはハメネイ師ばかりではなく、宗教界の長老全員をも、敵に回すことになろう。
最も大きなアハマド・ネジャド大統領の間違いは、ヘイダル・モスレヒ内相をハメネイ師と相談せずに、首にしたことだと言われている。いずれにしろ、アハマド・ネジャド大統領の任期は2013年までだが、彼が最後まで大統領職を全うすることができるのか、あるいは途中で首にされるのかは、もう少し様子を見る必要がありそうだ。今後の1年間はイランから目を離せない、ということであろう。