「エイプリル・フールではないトルコのメガ・プロジェクト」

2011年4月30日

 トルコのエルドアン首相が、まさに21世紀の歴史に残る、大プロジェクトを始めることを宣言した。それは、現在あるボスポラス海峡以外に、人口のボスポラス海峡を建設するという計画だ。

 運河の長さは45キロメートル、プラス・マイナス3-5キロメートルというものであり、運河の幅は150メートル、水深は25メートルという巨大なものだ。この運河が出来上がると、現在のボスポラス海峡の通過が簡便になり、危険度も下がるということだ。

 現在のボスポラス海峡は、年間51000隻の船が通過しているが、運河は1日150隻が通過し、年間で85000隻が通過する計算になっている。つまり、トルコは地中海と黒海の間を、136000隻の船を通過させるということだ。

 この運河の建設には、述べるまでも無く、膨大なセメント・鉄骨が必要となるが、そのためセメント生産は6600万トンから、1億トンにまで増加する。鉄鋼生産も800万トンから、1300万トンに増加する見込みだ。

 そのことは、トルコの産業界を活性化させるし、労働市場も活気付けることになる。セメント・鉄鋼部門だけでも、25パーセントの雇用増が期待されており、工事に関連しては100万人の雇用が、工事期間に必要であり、完成後には150万人の新たな、雇用が創出される見込みだ。

 工事は2014年に始まり、400億ドルの予算が見込まれている。運河の両側には二つの大都市が建設され、空港が建設され、国際会議場が3箇所建設され、レクレーション・センターも設置される。当然のことながらオフィス・ビルやホテルも建設されることになる。この運河には5つの橋が、架けられる予定になっている。

 さて、トルコ政府はこのメガ・プロジェクトを進めるに当たって、どのような採算を考えているのであろうか。運河は有料となり、年間25億ドルの通過料が入る計算になっている。

空港は建設費用に10億ドルが見積もられているが、年間で6000万フライトを受け入れる予定だ。また巨大なショッピング・モールが建設される予定になっている。

このメガ・プロジェクトには、外国企業の投資が、200億から300億ドルあるものと期待されているが、湾岸諸国やイタリア、ロシアが既に名乗りを上げている。観光客は世界中から5000万人が押しかけ、市には1000億ドルの収入が、入る予定だ。

 さて、振り返って日本はこのような巨大な計画を、立てることが出来るのだろうか。東北を襲った地震と津波、福島の原発事故が起こった今こそ、巨大なプロジェクト、夢のプロジェクトが計画されるべきではないのか。

 その夢のプロジェクトへの投資は政府ではなく、民間企業によってなされるのであり、かつ外国の投資家を引き付ける、魅力的なものでなければなるまい。そんな大きな夢を描ける政治家も企業人も、日本にはいないということなのだろうか。多分いないというのが、現在の正直な日本人に対する、世界の評価ではないか。それでは外国からの投資は期待できまい。