「エジプトエリート取り調べと軍の困惑」

2011年4月15日


大衆の蜂起により、エジプトのムバーラク大統領は、辞任させられた。その2・11革命の成功は、前権力機構の要人たちを、震え上がらせている。大衆があらゆることで権利を主張し、政府の決定に反対するようになったからだ。

 たとえば、大学生は大学の運営まで、自分たちを加えろと言い出している。そのことは、大学が大学として、機能し難くなるということだ。

 アラブ連盟の事務総長を務めていた、元外相のアムル・ムーサ氏が辞任した後任に、エジプト政府はムスタファ・ファッキ氏を推薦していた。しかし、民間から彼は前政権の一員であり、ふさわしくないという反対意見が、出てきている。もちろん、ムスタファ・ファッキ氏自身も、前政権と関係があったからと言って、その全ての人たちが汚職に絡んでいるとは限らない、と反発意見を述べた。

 現在では、大衆の意見が強くなり、前政権の要人たちが次々に、犯罪容疑者として取り上げられ、刑務所に送られている。昨日までの御殿暮らしが、今日は薄汚れた刑務所に変わるのだから、まさに天国から地獄の絵図であろう。

 ムバーラク前大統領は病気を理由に、シャルム・エルシェイクの病院に辛うじて留まっていられるが。それもあと一二週間の猶予で、その後はカイロの法廷に引き出されることになっている。

 ムバーラク前大統領の二人の息子、アラーア氏とガマール氏は、既にカイロ郊外のトラボラ刑務所に、入れられたということだ。それ以外にも、ムバーラク政権下で権勢を誇った、内務大臣のハビーブ・アドリ氏、与党事務総長だったサフワト・シャリーフ氏、大統領府のトップだったザカリヤ・アズミ氏と言った要人中の要人たちが、押し並べて刑務所に、送り込まれているのだ。

 彼ら以外にも、ビジネス・エリートの中にも、多くの大物が刑務所に送られている。そうした状況は、現在エジプトで最高権力の地位にある、軍幹部にも影響が及ぶ、危険性がある。

 現在軍最高評議会のトップであるタンターウイ国防大臣は、ムバーラク前大統領によって指名された人物であり、副大統領職にあるオマル・スレイマーン氏も、ムバーラク前大統領に抜擢されて就任しているのだ。もちろん、それ以前のポストである情報長官職も、ムバーラク前大統領の指名によるものだった。

 そうなると、彼ら新しい権力構造を形成している人たちも、前政権とはべったりの関係であったことから、汚職に関連していると疑われても、仕方があるまい。要人の裁判の中で、彼らの名が挙がってくる危険性は、高いと考えるうべきであろう。