「英仏にあせりか?米は今後リビアでどう動く?」

2011年4月13日


 リビアのカダフィ体制は非人道的である、という結論が国連で出され、それに従って、飛行禁止区域が設定された。そのことは、飛行禁止を徹底するために、最低限必要な空爆を始めとする、軍事行動を認められた、ということであった。

 問題はカダフィ体制が非人道的であるにしても、リビアはれっきとした独立国家であり、人道の名の下に国内の対立に、外国が軍事介入をすることが、容易に認められるかということだった。

 しかし、国内経済が行き詰まっていたフランスとイギリスは、国連の決定が出るや否や、リビアのカダフィ体制打倒の、軍事行動を開始した。それは、フランスの空爆によって始められた。

イギリスも追従する形で、リビアのカダフィ体制側に対する、軍事行動を起こしたが、そのことによって、反体制側が目に見えて軍事的優位に、立つということはなかったようだ。

 国際世論は押しなべて、フランスとイギリスの過剰な軍事行動に、冷たい視線を向けることになった。なかでも、アメリカはイラク、アフガニスタンという二つの戦争を抱えていることから、第三の戦端を開くことに、躊躇していたというのが一般的な評価だった。

 アメリカはアメリカの意図を超える、フランスとイギリスの軍事行動に、一定のタガをはめるために、リビアに対する軍事行動の主導権を、NATO,が持つべきだと主張し、アメリカの意向どおりに、NATOがイニシャチブを執るようになった。

 しかし、NATO、軍を構成する主要な二カ国が、フランスやイギリスの意向とは、別の立場を採った。それはドイツでありトルコだった。両国はNATO軍の名の下に、軍事行動を拡大するのではなく、まず平和的なリビア問題の解決の努力を、することだという立場を採った。

 このため、フランスとイギリスの思惑は、確実に外れたのではないか、と思われる。頼りにしていたアメリカが腰を引き、次いでNATOのなかの軍事大国であるドイツとトルコが、なかなか軍事行動に参加してくれないのだから、無理もなかろう。

 トルコはリビア人の戦闘よる、負傷者を引き取って、自国内で治療をするという、まさに人道的な立場を採り、カダフィ派反カダフィ派のリビア人の、高い評価を得るに到ったのではないか。

 フランスとイギリスが支援する、反カダフィ派は一般人であり、正規の軍人ではなかった。したがって、装備に勝るカダフィ派が、正規の軍人で構成され、十分な装備を有していたことから、当初はフランス、イギリスによる空爆で敗色が見えたのだが、間も無く盛り返し、次第にこう着状態に陥ってしまった。

 フランスとイギリスにとって、もうひとつ困ったことは、国際世論の手前、あまりおおっぴらに最新の兵器を、反カダフィ派に送るわけにも、行かなくなったことであろう。

 フランスとイギリス、そしてうまくいけば、アメリカも支援してくれる、と思っていた反カダフィ派は、次第に兵器,資金、義勇兵が不足して行ったのだ。そして、そうした状況の中で、アフリカ諸国が仲介に名乗り出た。それはカダフィ大佐の辞任と引き換えに、彼の子息サイフルイスラーム氏が、暫定的な大統領に就任し、新しいリビアの政治体制を築いていく、というものだった。

 このアフリア諸国首脳の提案は、反カダフィ派の内部に、意見の相違を生み出した。一部の者は、アフリア首脳の調停案を受け入れたい、と考えるようになり、他方は、断固カダフィ大佐とその家族も、権力との関係を維持することを認めない、というものだった。

 こうした状況になると、益々フランス、イギリスの立場は、弱くなってしまう。将来の利益も不安になってしまうのである。そこでフランスとイギリスはNATO.軍に対し、積極的な軍事行動に出るよう、強く要請することとなった。

 もうひとつフランスとイギリスが試みたのは、国際会議を開催し、カダフィ体制打倒を決め、その決定に基づいて、アメリカとNATO軍に、積極的な軍事介入をさせるという方法のようだ。カタールのドーハで開催される、リビア問題をめぐる会議の目的は、このような結果を生み出すためのものであろう。

 さて、これまでうまい具合に身をかわし、リビア問題でNATOを担ぎ出し、蚊帳の外に出ていたアメリカは、今後どうするのであろうか。多分にアメリカはフランスとイギリスが疲労し、打開策が無くなり、リビア国内でもカダフィ派と反カダフィ派が、次の一歩を踏み出せなくなった段階で、出て行くのではないかと思われる。

 アメリカにとって、リビアはフランスやイギリスにとって大事なように、石油資源、国内戦闘後の復興、そして、アフリカ最大の空軍基地の回復という観点から、どうしても、強い影響力を持ちたい国だからだ。

 加えて、アメリカはフランス、イギリスに、イラクやアフガニスタンでの戦争で借りがあるということだ。なかでも、イギリスはこれまで積極的に、イラク、アフガニスタンへの軍事行動を、支援してきてくれていた国だ。

 そのイギリスを最後まで支援せずに、イギリスがリビアでの権益を獲得できないで、手を引く状態にはさせないのではないか。アメリカはいま、リビア問題への介入のタイミングを、狙っているのではないかと思われる。既にアメリカの軍幹部から、アメリカは最終的にリビアへの、軍事介入をせざるを得ない、という意見が飛び出しているのだ。