「オマーンの悪夢」

2011年4月 6日

 アラビア半島東端に位置する、オマーンはおとぎ話に出て来るような、小さくて美しい国だ。国王の美的センスが全土に行きわたっており、都市部では2階建て以上の、個人住宅の建設は認められず、外壁は白と定められている。

 庭には樹木を植えることも、指定されているのであろうか、緑の木々に囲まれた、白い瀟洒な住宅群が並んでいる・そして道路にも、他のアラブの国に比較して、ゴミが散らばっていないのも、オマーンの特徴だ。

 極めて親日的で、同国の石油輸出の主たる対象国は、日本になっている。アラビア半島とは言え、東アフリカの影響や、アジアの影響があるからであろうか、性格はオープンであり冗談が通じる。体形も日本人程度の人が多く、穏やかな性格の人が多いようだ。

 しかし、この国は1960年代後半から、1970年代初めにかけて、ドファール戦争という、内戦が起こっている。国王がイランの支援を受け、何とか解決することが出来たが、相当な痛手であったろう。

 今回オマーンについて簡単な紹介をし、オマーンについて報告しようと思ったのは、このオマーンでも他のアラブ諸国の例にもれず、改革、革命の波が押し寄せており、国内には不安定な状況が、見え隠れしているからだ。

 そうした中で、オマーン政府はソハールの住民の一部が、武器を無許可で買い始めている、という情報を伝えた。ソハール市はオマーンの首都マスカット市の、北部に位置するガスの積み出し港だ。

 オマーンでは「怒りの金曜日」が、これまでも何度か宣言され、反体制のデモが繰り返されている。「怒りの金曜日」は他のアラブの国々でも、似通った名前が付けられ、金曜日昼の集団礼拝の後に、反政府の抗議デモを呼び掛けるための、キャッチフレーズになっている。

 この「怒りの金曜日」に加え、今回はデモだけではなく、武器が登場しそうな気配なのだ。そうなると警察や軍隊も、それなりの対応をすることが必要になり、死傷者が出る可能性もある。

 一旦死傷者が出ると、それは悪循環を起こしていき、当初予測した状況よりも、悪い状況に至る場合がある。しかも、部族的色彩と部族構成員同士の結びつきが強い地域では、なおさらのことだ。

 今度の「怒りの金曜日」は、4月8日ということになるが、オマーンの状況はどう推移するのであろうか。1960年代後半から1970年代にかけて起こった、ドファール戦争のような大規模な衝突に、繋がらなければいいのだが、と懸念している。