ニューヨーク・タイムズが伝えたところによれば、リビアの東部ベンガジに本部を置く反カダフィ勢力には、危険な要素があるというのだ。同紙の伝えるところによれば、反カダフィ勢力の中には、アルカーイダと関係のあるグループも、紛れ込んでいるというのだ。
また、イスラム原理主義者のグループも、関係あるということだが、それは当然であろう。なぜならば、これまで何度か書いてきたように、リビア東部にはイドリス王制の時代、実はサヌーシー運動の、盛んだったところだからだ。
サヌーシー運動とは、イスラム教の一派であり、サウジアラビアのワッハーブ派と(原理主義)と、密接な関係にある集団だ。したがって、リビア東部で反カダフィ闘争が始まった段階から、この動きにサヌーシー派が関係していたことは、否定できないし、場合によっては彼らが、反カダフィ闘争の主体である可能性もあるということだ。
問題はなぜこの段階になって、カダフィ大佐に有利な発言を、アメリカ政府の高官が、始めたのかということだ。アルカーイダを目の敵にしてきた、アメリカ政府と国民は、今回の発表を機に、一気に反カダフィ派支援をやめ、カダフィ大佐擁護に回るように、なる可能性があろう。
そこで考えられるのは、イギリスとフランスの暴走を阻止しないと、アメリカは完全に漁夫の利を得られなくなる、という経済的理由。そして、アメリカ国民の厭戦気分によるのではないか。アメリカの世論調査によれば、半数のアメリカ国民は、リビアへの軍事介入に、反対だということだ。
そして、それ以外に考えられるのは、トルコのリビアに対する秘密交渉が、しかるべき段階に達し、妥協点が見えてきたのではないか、ということだ。つまり、カダフィ大佐は権力者の立場から退き、民主的なリビアの新しいリーダーを大統領とする、新体制に入るということだ。
その場合、カダフィ大佐の子息サイフルイスラ-ム氏も、大統領候補として立候補することを認める。彼が当選するか否かは、リビア国民の決める問題とし、外部が介入することはやめる。
カダフィ大佐のその後の処遇については、本人の希望に任せ、カダフィ大佐が希望するならば、トルコは亡命(移住)を認めることとする。トルコは内紛後リビアの経済発展に、しかるべき権益を持つことになる。