「本音が見えてきたリビア攻撃」

2011年3月30日

 カダフィ大佐の圧政下で、それに抵抗して立ち上がったリビア国民が、政府軍によって大量に虐殺される、危険性が高まっている。したがって、国連はこの虐殺を防ぐために、リビアに飛行禁止区域を、設定しなければならない。

 素晴らしい、誰もが納得のいく説明だった。結果的に、国連はリビアに飛行禁止区域を設定したが、そのことは同時に、リビアに対する軍事行動を、起こすことを認める、という意味を含んでいた。

 述べるまでもなく、飛行禁止区域が確実に、飛行を禁止できるようにするためには、リビア国内のミサイル基地、空軍基地などを、潰さなければならなかったからだ。そして、フランスは国連の飛行禁止区域設定合意ののち、間髪をいれずにリビアに対する、空爆を始めている。

 その結果、カダフィ軍には怯みが見え、大幅に後退するという、現象が生まれた。ベンガジを本部とする反体制側は、破竹の勢いで西進して行った。もうこうなると、カダフィ体制が打倒されるのは、時間の問題だろうということが、多くの人たちによって語られるようになった。

 しかし、その後、カダフィ大佐はリビア国民人に対し、反攻を叫び、結果的にリビアの軍事情勢は、一進一退というこう着状態に入って行った。これでは相当の時間が経過しない限り、決着がつかないと考えて、あせったのはイギリスとフランスであろう。

 時間がかかるということは、戦費もかかるということだからだ。そこでイギリスのロンドンで、リビア問題を巡る国際会議を、開催することが決められ、会議は「リビア国民へのよりよい将来」と命名され開催された。

 会議から流れてきた情報を見ていると、露骨にカダフィ体制打倒後の、分捕り合戦が始まっていることを、感じさせられる。イギリスもフランスも、リビアでの権益獲得に向けて、活発に動き出しているのだ。例えば、フランスはリビアの東のベンガジ市(反体制派の本部がある)に、大使を派遣することを決定し、それを国際社会に伝えた。

 このイギリスとフランスの動きを受け、リビアの反体制派も「カダフィ体制の終焉は時間の問題だ。」と勢い込んでいる。そればかりか、反体制派は戦争でカダフィ大佐が死ぬのでも、国外逃亡(亡命)するのでもなく、あくまでもリビア人によって捕まり、裁判にかけられるべきだ、と主張し始めている。

 それは、カダフィ体制が打倒された後には、必ずカダフィ大佐を捕まえ、裁判にかけ、処刑するということを意味しているのだ。その場合、イラクのサダム・フセイン大統領のように、長期間に渡って刑務所に留め置くのではなく、早急に処刑されるのではないか。

 そうでなければ、カダフィ大佐もまた、サダム・フセイン大統領と同じように、戦いの後のリビアが、生き地獄だと語るかもしれないからだ。死刑執行人が叫んだ「地獄に堕ちろ!」という言葉に対してサダム・フセイン大統領が語った「今のイラクが地獄ではないのか」という言葉は、多くのアラブ人の記憶に、いまだに留まっているからだ。それが、その後のイラク内乱の、エネルギーの一部に、なっているのではないか。

 イギリスとフランスのはしゃぎまわる、という表現も当てはまりそうな動きに対し、アメリカも出遅れることを、気にし始めたようだ。オバマ大統領は反体制派への武器供与や、軍事行動を正当化する発言を始めている。

 トルコもまた、仲介の努力を続ける一方で、ダウトール外相が「NATOはカダフィに現実を伝えるために圧力をかけるべきだ。」と発言し、軍事力行使の必要性を認めている。

 トルコはいまの段階に至ってなお、カダフィ大佐の亡命を受け入れるのであろうか。あるいはリビア国民 (反体制側)の意向し沿って、裁判の場にカダフィ大佐が引きずり出される状況を、許すのであろうか。リビアの反体制の蜂起と、その後の内乱はすでに、その最終段階にまで至っている、ということだ。