「エジプトの改憲国民投票の結果と今後」

2011年3月21日

 エジプトで1月25日に始まった反体制大衆蜂起は、18日後の2月11日には、その目的を達成した。その後、エジプトでムバーラク大統領追放後検討されてきた、改憲についての国民投票が、3月19日に実施された。この結果は、今後のエジプトの政治を、方向付けるものになりそうだ。

 この国民投票には1850万人が参加し、全体の41パーセントに達した。投票結果は改憲に賛成が77・2パーセント1400万票以上、反対が22・8パーセント400万票だった。

 この結果を受け、大統領選挙と国会議員選挙が、6ヵ月後に実施されることになったが、現在最高権力を握っている軍部は、早急な民間への権限委譲を、望んでいるということのようだ。 

 憲法改正に関する検討は、ムバーラク大統領辞任から5週間後の、10日間という短期間で、行われたことになるわけだ。

 この改憲の結果、大統領立候補の条件は緩められた。いわば誰でも立候補できるようになったというわけだ。そこで関心が持たれるのは、大統領立候補者の最有力候補と噂されている。アラブ連盟事務総長のアムル・ムーサ氏と、元IAEA事務局長のムハンマド・エルバラダイ氏の動向だ。

 まず、ムハンマド・エルバラダイ氏の動向だが、カイロ郊外のムカッタムで開催された、憲法改正の集会に姿を見せたが、大幅に開催時間に遅れて到着し、しかも尊大に振る舞ったために、激しい非難を浴びたということだ。彼は投票所でも、石を投げつけられ、靴をぶっつけられたと伝えている。

つまり、エジプト大衆は彼の言動に、腹を立てているということであろう。外国生活が長かったためか、あるいは彼の性格の問題か、彼の言動には、エジプト社会では受け入れられない要素が、殊の外目立つようだ。

 投票を前後し、エジプト社会では、憲法改正賛成派はイスラム教徒、ムスリム同胞団支持、アムル・ムーサ支持という認識が広がった。

他方、憲法改正反対派はコプトキリスト教徒、アメリカ支持、ムハンマド・エルバラダイ氏支持という認識が、広がりつつあるようだ。

 今回のエジプト変化の口火を切り、大衆動員に成功し、大衆蜂起を成功させ、ムバーラク大統領打倒を成功に導いた、リベラル派の青年層はこうした状況に、大きな失望と、懸念を抱き始めている。

それは宗教勢力の政治の舞台への台頭が、民主的な政治が発展していく上で、大きな障害になると思われるからだ。彼らは何処か、エジプトの軍部、国民民主党(ムバーラク大統領時代の与党)とムスリム同胞団との間で、権力分割の取引が行われたような気がしてるのではなかろうか、それは考え過ぎであろうか。