「シリアでも遂に反体制の炎が燃え始めた」

2011年3月20日

 シリアはアラブ世界の中で、国民に対する締め付けが、最も厳しい国のひとつであろう。しかし、チュニジアやエジプトの大衆蜂起が、大統領追放を実現し、イエメンやバハレーン、ヨルダンで、そしてリビアでも反体制の炎が燃え上がっていたにもかかわらず、シリアではさしたる兆候、見せていなかった。

 シリアでもそれらしい動きはあったが、それは極めて小規模であり、大衆蜂起はもとより、デモとも言い難いレベルのものであった。しかし、遂にシリアでも、本格的な反体制の動きが始まるようだ。

 先週の金曜日、シリアの南部の都市デラア市で行われた、デモの犠牲者の葬儀が、土曜日に行われた際、数百人の葬儀参加者が抗議デモを始め、自由と改革を叫んだということのようだ(ニューヨークタイムズはデモ参加者数を2万人以上と伝えている)。しかし、デモ参加者はアサド体制については、何の非難のスローガンも叫んでいない。

 この抗議デモについては、二通りの説明がなされている。ひとつは比較的穏やかなものであったという説明。もうひとつは緊張が高まっていたという説だ。ただ、デモ参加者と治安警察との間で、衝突が起こったとは伝えられていない。

 それは、アサド体制が国民の動きに、非常に神経質になっているためであろう。もし、強硬手段を執れば、それは世界から非難を浴びることは明らかであり、体制に対する国際的な非難が高まるからだ。そうなれば、反体制派は勢いを増すことになり、かえって危険だからだ。

 このデモに先立ち、先週水曜日には、内務省の前にデモ隊が集結し、抗議を行ったが、その際、20人が逮捕されたという情報がある。多分に負傷者も出ているのではないかと思われる。

 シリア政府派この水曜日のデモや、金曜日のデモについて、調査をすることを発表し、負傷者が出た原因を調べるようだ。それは内務省の対応が正しかったのか、デモ側はどう行動したのかを調べると同時に、国民の動向を調べるためであろう。

 シリア政府がこうまでも神経質になるのは、今までに、シリア国内でデモが起こったのは、首都のダマスカス市に加え、ホムス市、デラア市、バニヤース市、デル・エルズール市と5都市にも及んでいるのだ。

 しかも、それが同時に起こっているということが、シリア政府にとって一番気になる、危険な兆候であろう。シリア国内には既に、全国規模でのデモを呼びかけることが出来る、しっかりした組織が存在する、ということであろう。

 この動きで気になるのは、国連のバンキムン事務総長や、アメリカ政府が異常なまでに、関心を示している点だ。バンキムン事務総長もアメリカ政府も、シリア政府に対してデモ抑え込みに、暴力を行使しないように呼びかけるとともに、デモの自由を認めるよう呼びかけている。シリアの反体制派は一連の行動を「威厳の金曜日」と命名したようだ。