「トルコ首相カダフィ大佐にアドバイスに動く」

2011年3月16日

 エジプトの凋落と後退したかのように、トルコの中東地域での存在感が増している。エルドアン首相のダボス会議での、ペレス・イスラエル大統領に向けた激しい発言や、トルコのガザ救援船事件で、トルコは完全にアラブ諸国のリーダー格に、のし上がったようだ。

 いま内戦状態にあり、飛行禁止空域の設定が近いであろうリビア、そしてそれに次いで外国軍の侵攻もありうるリビア問題で、エルドアン首相がカダフィ大佐に3度も電話連絡した、ということが報じられた。

 エルドアン首相のカダフィ大佐へのアドバイスは、リビアの国民全体が支持できる人物を、大統領に立てることによって、この危機を回避すべきだというのが、その内容だったようだ。

 トルコ政府はNATO軍などのリビア介入に、真っ向から反対し続けてきている。述べるまでもなく、トルコは唯一のイスラム教徒の国である、NATOメンバー国だ。そして、オスマン帝国による、長いアラブ世界リードの経験から、トルコはどのようなアドバイスが、アラブには有効なのかを知っているのだ。

 トルコの考えでは、外国はアドバイスと協力、支援をすることによって、リビア国民が自身の力で、問題を解決できるというのだ。軍事力の行使による外国の介入は、過去に成功した例がないし、問題を複雑化しただけだ、とまで言い切っている。

 トルコがリビアについて、他国に比べ、デリケートな対応をしているのには、幾つかの理由がある。第一にトルコとリビアの貿易額が、24億ドルと大きいこと、トルコの建設会社がリビアで受注している、建設事業の合計金額が、150億ドルにも達するからだ。そのことに加え、エルドアン首相はカダフィ大佐からカダフィ賞を受賞してもいる。

 トルコがリビア問題で関与する、もうひとつの理由は、時代の変化をアラブ首脳たちに、正しく認識させることにあるようだ。トルコは時代が大きな変革期にあり、国民に民主主義をもたらさなければならない、という考えだ。そして、この大きな変革の波は、軍事力では防ぎようがないというのだ。

 トルコのダウトール外相も、エルドアン首相と似通った考え方を示している。それは、この大きな時代の変革のなかで、修正していかない体制は、やがてより以上の大きな爆発に、遭うことになろうというのだ。つまり、時代の変化を素直に認め、改革の意思を持ち、実行していかない国の体制は、崩壊していく運命にあるということだ。