「カダフィ体制が崩壊したら」

2011年3月11日


 2月17日を大きな起点として始まった、リビアの大衆蜂起、革命の戦いは今日なお、勝者も敗者も決めることなく続いている。もうこの内戦の犠牲者の数は、1000人を優に超え、3000人に近付いているのではないか。

 それとは別に、何百万という外国からの出稼ぎ者が、エジプトとの国境やチュニジアとの国境地帯に脱出し、そこで状況の変化を待っているようだ。彼ら出稼ぎ者に関するニュースの中に、出稼ぎ者たちは帰国したくないと言っているというのがあった。出来ればまたリビアに戻りたい、と言っていたというのだ。まさにその通りであろう。

 リビアでの彼らの月給が幾らかは知らないが、自国の数倍あるいは数十倍になることは確かであろう。そのなかから、何がしかの部分を、家族の元に送っていたのだ。

 エジプトからは湾岸戦争後、ムバーラク大統領の要請があり、リビアは150万人の出稼ぎ者を受け入れていたが、彼らがいま帰国した場合どうなるのか。たちまちにしてエジプトの失業者の割合が激増し、エジプト国内は不安定の度を増し、再度の革命騒ぎが起こり、最終的には軍事クーデターで、対応せざるを得なくなるだろう。

 もちろん、その中からヨーロッパに非合法に、移住していく人たちの数も、少なくなかろう。チュニジアから、エジプトから、そして1800キロメートルもあるリビアの海岸線から、不法移住者がヨーロッパ大陸にたどり着いた時、

ヨーロッパ諸国はどう対応するのであろうか。

 石油やガスをリビアに依存していた、ヨーロッパ諸国も多いだけに、エネルギー供給を巡っても、ヨーロッパ諸国は緊急事態に、直面することになろう。ヨーロッパ諸国が予測しているような、短期間でリビアの情勢が落ち着くとは、考えるべきではあるまい。

 そもそも、リビアの国内の構成は、部族、東西と南の地域、そして世俗主義者、サヌーシー派など、多くの要素が集まって、出来ている国なのだ。革命が成功した段階では、それ各々のグループの欲望が、暴発することが予測される。つまり、第一革命が終わった段階から、第二革命が始まる可能性が高いのだ。

 もちろん、カダフィ体制下で種々のプロジェクトを、受注していた企業にも、大きなダメージがあろうし、兵器の輸出もままならなくなるだろう。そうした経済的ダメージが、どう回復されていくのかは予測できない。

 あるものを破壊することは容易だが、それを再構築することは容易ではない。時間とひとが必要なのだから。