今まで犬猿の仲だった、パレスチナ革命の主流派であるファタハが、ハマースを欧米のテロ組織リストから外すように、要請し始めている。その理由は、パレスチナ主流二派が連帯して、パレスチナ問題の解決に努力したい、ということだと説明されている。
しかし、そのファタハの説明は本当であろうか。つい最近、辞任に追い込まれているパレスチナ自治政府の、ファッヤード首相が進めようとしていたのは、ファタハとハマースの連合政府の再結成だった。その彼の努力はファタハ内部からの、強い力によって潰されていた。
今回欧米諸国に働きかけてハマースをテロ組織リストから外すように働きかけているのはパレスチナ自治政府の元外相のシャアス氏だ。
こうしたファタハの立場の変化は少なからず、アラブ諸国で活発化してきている、大衆蜂起(革命)の影響によるのではないか。パレスチナ人の中にも、ファタハの主導するパレスチナ自治政府は、イスラエル側に対し、妥協だけし続けてきたが、その見返りを何も得ていない、という不満が山積している。
つい最近も、ヨルダン川西岸のナブルスに近いクスラ地区で、イスラエル人入植者の一団が、パレスチナ地区のオリーブの木を切り倒したために、イスラエル人入植者とパレスチナ住民との間で衝突が起こり、イスラエル側1人パレスチナ側が10人の負傷者を出している。
ハマース嫌いだった、エジプトのムバーラク大統領が打倒され、新たな政府に代わり、エジプト政府のハマース対応にも、変化が見え始めている。一部にはハマースと同根の、エジプトのムスリム同胞団の政治的な力が、増してきている、という憶測も飛び交っている。
ガザに陣取っているハマースのイスマイル・ハニヤ首相が、新たにエジプトの首相に就任したイッサーム・シャラフ氏と、最初のコンタクトを取ることに、成功したと伝えられている。
その中で、イスマイル・ハニヤ首相はイッサーム・シャラフ首相に対し、ガザ回廊のゲートを開き、物資の自由な行き来が出来るようにしてほしい、と要請したようだ。
こうしたエジプト側のハマースに対する対応の変化は、ファタハ側に不安を抱かせているのであろう。そのために、ファタハは欧米に対して、ファタハがハマースを抱え込んでいるということを、印象付けるためにテロ組織のリストから外して欲しい、と言い出したのではないか。