エジプトで起こった大衆蜂起は、徐々にではあるが、エジプトの内政と外交に、変化を生み出し始めているようだ。内政では内閣改造が、ムバーラク大統領の影響を薄める人事で、進められ発表された。
外交面では、パレスチナに対する対応に、変化が出始めている。在パレスチナ・エジプト大使はガザ回廊の通過を、今までよりも緩和することが、エジプト政府内部で検討されていると語った。
ユーセフ・オスマン大使はその条件として、ガザの状況が安定化することを挙げている。こうしたエジプト政府の変化は、多分に国際世論をバックにしたものと思われる。
国際世論はガザの権力が、ハマースによって握られた時から、イスラエルとエジプト政府との話し合いで、通過を規制していたことに、強い非難を浴びせていた。
具体的には、ガザの回廊通過規制が、何時緩和されるのかは、明らかになっていないし、どの程度緩和されるのかについても不明だ。しかし、早晩それが実行されることになろう。
このエジプト政府の変化について、ハマースの代表者であるミシャアル氏は、「エジプトが本来あるべき位置に戻って来た。我々の側に来た。」と歓迎の意思を表明している。
他方、イスラエルの側はこのエジプトの変化に、不安を抱いている。述べるまでも無く、エジプトのガザ回廊通過の規制緩和が実現すれば、大量の物資がエジプトからガザ地区に流れ込むからだ。その中には、武器や武器を造る材料が含まれている可能性もあるからだ。
ただ、このエジプト政府のガザ回廊対応変化が、実際にどの程度のものになるのかは不明だが、常識的に考えて、エジプト政府がイスラエルとの緊張を、生み出すレベルには、達しないのではないか。
エジプトの権力はいまだに軍が掌握しており、軍は当然のこととして、イスラエルとの緊張を生むことは望んでいまい。問題はムスリム同胞団を始めとする野党勢力が、このことについて強く政府に要求してくることは、間違いあるまい。それにどこまでエジプト政府が耐えられるかだ。