既に、サウジアラビアを取り巻く周辺諸国は、共和制王制に関係なく、大衆による反体制の動きが、活発化している。
バハレーンやイエメンの状況は、既に闘争の半ばを過ぎた、と言っても過言ではあるまい。そこまで、体制側は追い込まれている、ということではないか。
周辺の家が四方で火事になっていれば、その真ん中にある家も、確実に火事になろう。それと同じ現象が、サウジアラビアで起こっている、と考えれば理解しやすいだろう。
このため、サウジアラビア政府はアブドッラー国王が病気が回復し、帰国したことを祝うという名目で、360億ドルの国民に対する助成金を、出すことを発表した。述べるまでもなく、それはアブドッラー国王の病気快癒祝いというよりも、国民をなだめるための、大盤振る舞いということであろう。
その大盤振る舞いの金は、住宅取得の支援であったり、生活援助であったり、教育援助であったり、ということのようだが、どうもスンニー派の国民には手厚く、シーア派の国民にはそうでもないようだ。
これまで、サウジアラビアではシーア派国民は差別され、嫌われ、イスラム教徒ではない、といった手厳しい対応を、受けてきている。外国で高学歴を取得して帰国しても、政府の要職はつけないし、出世も頭打ちだった。
そうしたシーア派国民の間では、今回のアラブ全域を襲う大衆蜂起の波が、直接的に影響を及ぼしているようだ。
3月11日を「怒りの日」としようという、フェイス・ブックの呼びかけが、いまサウジアラビア中に伝わっているが、果たして何処まで広がるのだろうか。それは、サウジアラビアのスンニー派も、シーア派も巻き込んだものに、なるのだろうか。
既にシーア派国民は、金曜の集団礼拝の後、表通りに繰り出し、デモを行っている。そのデモは「平等」と「シェイク・タウフィーク・アーメル師の釈放」をスローガンにしている
現在、サウジアラビアのシーア派が居住する、ペルシャ湾側、同国北東部のアルカテイーフ市、アルフーフ市、アルアフサ市などにはデモに備え、サウジアラビア政府が1万人の治安警察が派遣され、展開しているようだ。
問題はこれら治安警察が、大きな間違いをしでかしてしまったことだ。それはデモ参加者の女性に、攻撃を加えてしまったことだ。サウジアラビアでは親族以外の男性が、女性に暴力を加えることは、ありえないことであり、厳しい非難を浴びて、当然の行為なのだ。
サウジアラビアの専門家は、このミスが今度の怒りの日を、大規模なものにする、危険性があると指摘している。スンニー派のサウジアラビア国民は、何処までこの怒りの日に、賛同するのだろうか。彼らもまた、男女知識層による「政党の結成」要求、女性による「受刑中の夫父親の釈放」を要求している。
サウジアラビアの3月11日は、気の許せない金曜日に、なる可能性が高い。