エジプトで大衆蜂起が始まると、シナイ半島のガザの回廊ラファに駐屯するエジプト軍将兵には、食料や水が届けられなくなる時期があった。この時、エジプト軍将兵に水と食料を提供したのは、ガザの住民だったと伝えられている。
当然、そのことは今後に、エジプト軍の将兵が、ガザへの物資の輸送の上で、黙認するケースが増えるだろうことを、予測させた。それは人情であろう。
エジプトで革命に成功した若者たちが、最初に気に賭けたのは、同胞パレスチナ人のガザでの、生活環境だったようだ。1月25日青年年組織なる団体が、ガザに食料など生活物資を、届けようと立ち上がっている。
彼らがガザに物資を運びこむことに、エジプト政府はあまり反対しないだろう。何とならば、多くのエジプト国民が、ガザのパレスチナ人を支援することを、望んでおり、故サダト大統領が交わした平和のための、イスラエルとのキャンプ・デービッド合意を反故にしたい、と望んでいるからだ。
イスラエルはこの動きに、どう対応するのだろうか。軽々には手を出せまい。しかも、このエジプトの青年たちの行動には、50人から100人のヨーロパの支援組織のメンバーも、参加するというのだ。
エジプトの青年たちは、ガザの回廊ラファを継続的に、開放したいとも考えている。それは、イスラエルにとっては、極めて不安なことであろう。これまで、秘密の地下トンネルを通じて、エジプト側から武器が持ち込まれていたのが、これからは大っぴらに、運び込まれる可能性があるからだ。
イスラエルにとって、今回の一連のアラブ大衆の蜂起は、大きな対応変化を、必要とさせているようだ。放置できないとなれば、戦争も考えに浮かんでくる、ということであろう。
そうしたイスラエルの置かれた状況を見て、イランはイスラエルがシリアとレバノンに対し、戦争を仕掛けるという情報を、流し始めている。しかも、イスラエルのシリア・レバノンへの攻撃は、すでにアメリカに報告済みだ、というのだ。
イランの報道によれば、イスラエルは一日も早く、シリアのバッシャール・アサド体制を打倒したいということだ。それはまんざら嘘ではあるまい。シリアはアラブの連帯と、イスラエルに対する敵対的立場を強調しており、しかも、レバノンのヘズブラを支援しているシリアを、イスラエルが攻撃したいと思うのは当然であろう。
問題は、それをイスラエルが実行に移すのか、移すとすれば何時になるのか、ということだ。少なくとも、いまエジプトは戦争が始まっても動けまい。そうであるとすれば、イスラエルにとって今が、シリア・レバノン攻撃を断行する、最後のチャンスなのかもしれない。そう考えてみると、イランの流した情報は、まんざら嘘とは言えないのではないか。