「アラブ革命の伝染病・サウジアラビアは大丈夫か」

2011年3月 3日

 チュニジアとエジプトで、大衆蜂起が起こり、結果は大衆による革命とされ、チュニジアのベン・アリ大統領は国外逃亡し、エジプトのムバーラク大統領はシナイ半島の別荘に、逃げ込んだ。

 チュニジアの場合は、結果的に革命後の国家を、リードする役回りに軍が就かず、不安定な状態が継続いているが、エジプトの場合は大衆革命を、横取りした形の、軍による権力支配が生じ(クーデター)、一応の安定を見ている。

 さてこの二つの革命に、挟まれているリビアでも、大衆蜂起が起こり、カダフィ大佐も間も無く、権力の座から追われることに、なりそうだ。なんと言っても、アメリカを中心にイギリスやフランス、インドといった国々が、カダフィ体制打倒に、本腰を入れ始めたことが、結論を早引かせそうだ。

 このチュニジアで始まった大衆蜂起は、次第に伝染病のように、他の国々にも伝播し、現在ではリビアに加え、アルジェリア、イエメン、ヨルダン、バハレーン、オマーンで、次第に激しさを増しているようだ。

 そこで、日本の石油輸入量のトップである、サウジアラビアにはこの伝染病は、伝播しないのであろうか。もし、サウジアラビアにまで及べば、石油の輸出がストップし、世界経済は大きなダメージを、受けることになることは、必至だ。

 いまのところ、政党結成に動いた知識人集団が、逮捕される戸いう事件が起こったが、彼らは間も無く釈放され、社会問題にまで発展していない。よく言えば、サウジアラビア政府が穏健な対応をすることにより、問題を拡大させないことに、成功したということであろう。

 しかし、本当にそうであろうか。サウジアラビアでは大衆蜂起は、起こらないのであろうか。サウジアラビアに住む友人からのメールでは、現段階では明確な、大衆蜂起への動きは無い。しかし、サウジアラビアを取り巻く王国に、次々にこの大衆蜂起病が伝染している。従ってやがては、サウジアラビアにも及ぶのではないか、という懸念を伝えてきた。

 もしこの大衆蜂起病が、誰かによって意図的に起こされている、と考えた場合、サウジアラビアには例外的に、及ばない可能性もあろう。しかし、大衆蜂起がアラブ各国で起こっている現在、サウジアラビアが情報の孤島でもない限り、他のアラブの国々で起こっていることが、伝わらないわけが無い。

 そうだとすれば、サウジアラビアで大衆蜂起が起こるのは、時間の問題ではないのか。もちろん、それが起こったとしても、必ずしも体制が打倒されるとは限らない。一定のダメージで済むことも、ありえよう。

 サウジアラビアで大衆蜂起病が起こるか否かは、サウジアラビアの周辺諸国の、今後の動向に注目していれば、予測がつくのではないか。バハレーンはサウジアラビアにとって、自国の一部のようなものであり、王国の一員でもある。ヨルダンもまた、サウジアラビアと同じ王国であり、オマーンもまた王国だ。

そして、イエメンでも大衆蜂起病は起こっており、日に日に激しさを、増している。つまり、サウジアラビアはいま、大衆蜂起病にかかった国々に、四方から包囲されるかたちに、なっているのだ。

それでも、サウジアラビアは大丈夫だ、と誰が言い切れようか。転ばぬ先の杖では無いが、今のうちから最悪の場合を想定し、対応策を考えておくべきではないのか。それが徒労に終わることを願うのは、当然ではあるが