今回のアラブの激震で、認識しておかなければならないことがある。それは、アラブ諸国には残念ながら、国民によって運営されてきた、共和国は存在しなかったということだ。もちろん、共和国の発足の時期は、必ずしもそうではなかったろう。
しかし、時間が経過するに従って、共和国は大統領の権限が頂点に達し、王国と何も変わらない、独裁国家になってしまったのだ。最初に変革が始まったチュニジアでも、エジプトでも、イエメンでもリビアでもそうだ。そして、これから始まることが予想される、シリアも例外ではあるまい。
これらの国々は、皆共和国と呼ばれ、王国に比べ、民主化が進んだ国家のように、言われてきていた。
他方、王国は常に時代遅れの国家のように、見られてきていた。そのため王国政府は、国民の怒りが爆発しないように、共和国よりもデリケートな神経を使った、国内政策を展開してきていた部分もある。
つまり、共和国で始まった大衆蜂起の波は、全ての共和国を襲う、可能性があるということだ。そして、それは共和国とあまり内容において、変わらない王国でも、起こりうる可能性が、高いということだ。
アラブ諸国は押しなべて、多宗教、多民族、多宗派の国であり、所得格差の大きくかけ離れた国でもある。そこでは地縁、血縁、縁故、仲介者の有無が、すべての可能性を限定してしまう。
既に王国でも、大衆蜂起が始まっている。バハレーンは既に、相当危険な段階に突入しているし、ヨルダンでも不安定な状況が、生まれている。そうした国では、大衆の要求が次第に拡大してきていることも事実であり、参加者が増加してきていることも事実だ。
クウエイトでもそうした潮流が、見え隠れし始めているし、オマーンでもサウジアラビアでもそうだ。クウエイトでは少数派のシーア派や、国籍を与えられないままに暮らしている、差別された住民、ビドーンの問題がある。
いまサウジアラビアに出張中の友人が、伝えてくれたところによれば、来週の金曜日は、大衆行動の呼びかけがツイッターを通じ、フェイスブックを通じて、サウジアラビア国内を駆け巡っているということだ。
これに備え、エビアン(ミネラル・ウオーター)を5箱注文したところ、2箱しか売れない、と言われたというのだ。友人はそのことが、騒動の前兆ではないか、と考えたようだ、確かにそうであろう、サウジアラビア国民の間では、騒動が起こる可能性が、高いと考える国民が、少なくないということであろう。
友人はとりあえず、ドバイに移動し状況を見、サウジアラビアが不安定化した場合には、ロンドンに向かう、とメールで知らせてきた。サウジアラビアで変化が起こった場合、それは大きな影響を、日本にも及ぼそう。国内政治で権力闘争の茶番劇をして、騒いでいる時期ではない、と思えるのだが。