アラブ各国がチュニジア病に罹り、体制が不安定化している。その原因として、これまで挙げられてきたのは、貧困、失業、不公正、独裁といったものだったが、それだけだろうか。
最近になって、特に強く感じる体制不安には、もっと深刻で根本的な原因が、あるような気がする。それは権力者たちの、家族の問題だ。どうも家族の言動が、大衆の間で不人気になり、体制批判が高まっているのではないか。
あるいは、家族の元首に与える影響が、結果的に元首の判断を誤らせて、取り返しの付かない状態に、なっているのではないか。
まず最初に、体制不安が起こり、遂には国外逃亡に到った、チュニジアの例を挙げてみよう。ベン・アリ大統領の浪費癖も、問題だったようだが、大大統領の夫人の金遣いも、相当荒かったようだ。権力者の妻たちは、夫の権力におぼれ、他人のものでも、自分のモノのような錯覚を、抱くのであろうか。
エジプトの場合も、ムバーラク大統領の妻である、スーザーン夫人の金に対するこだわりは、相当のものだったようだ。スーザーン基金を設け、各種の慈善活動を行っていたが、あらゆるところから、寄付を求めていた、という話を聞いた。
その上、スーザーン夫人は自分の次男ガマール氏を、大統領後継者にすることに、こだわっていたということだ。ムバーラク大統領は以前から、ガマール氏ではない他の人物に、副大統領の地位就かせ、後継者に育てたい、と考えていたが、結局は、スーザーン夫人の説得に、屈したということのようだ。
そのスーザーン夫人が後継者にしようと思っていた、ガマール氏は彼の友人たちで、閣僚人事を固め、多くの汚職を行い、国民の不満を拡大している。欲の皮が突っ張りすぎた結果、一家が居住の場所さえも、失いかねない状態に、陥っているのだ。
ヨルダンの王家の場合も、例外ではないようだ。アブドッラー国王に対する不満ではなく、ヨルダンの場合は、ベドウインのリーダーたちが、国王の妻であるラニヤ夫人の浪費と、身勝手な利益に絡む行動に、腹を立てて反発したことから、問題が拡大している。
パレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長の場合、自身の欲もさることながら、息子の金銭欲と汚職が、大きな問題になっている。マハムード・アッバース議長と対立した、ムハンマド・ダハラーン氏の取り上げた問題点は、マハムード・アッバース議長の息子の、金にまつわるスキャンダルだった。
日本を含め、何処の国でもある、家族のでしゃばり、横暴が権力を喪失する、主な原因のひとつに、なっているということだ。国家元首や会社の社長、あるいは、団体の長と呼ばれる地位に就く人たちは、まずは家族を引き締めて、教育することが大事なようだ。それが長期安定型の権力者を、生み出す根本であろう。