エジプトのアブルゲイト外相が、アラブ連盟のアムル・ムーサ事務総長を訪問して、二人きりで話し合っている。これは時期が時期だけに、多くの臆測が飛び交っているだろう。
表面的には、2001年3月以来、アラブ連盟事務総長を務めてきた、アムル・ムーサ氏の後任人事について、話し合われたということになっている。しかし、実はそれ以外のところに、会談の主題があったのではないかと思われる。
ムバーラク大統領在任の時代には、元カイロ大学学長を務め、その後政界入りし、大臣職を務めていたムフィード・シェハーブ氏を後任に、推薦するという話があった。
しかし、今となっては、その案は立ち消えであろう。それ以外の人たちについても、ムバーラク体制下の要人は、難しいのではないか。例えば、アブルゲイト外相自身ですらも、推薦される可能性は弱いのではないか、と推測する人たちが多いようだ。
現在、もっとも有力な候補として、話題に上っているのは、ムスタファ・ファッキ氏だ、彼は評論家としても健筆をふるってきた人物で、アラブ世界での知名度は、極めて高い。
今のエジプトの状況を考えると、アムル・ムーサ・アラブ連盟事務総長とアブルゲイト外相の会談の内容は、実はアラブ連盟事務総長の後継人事ではなく、エジプトの大統領候補について、話し合われたのではないかと推測される。
エジプト軍は既に、軍人から大統領候補を立てない、と明言しているが、だからと言って、ムバーラク体制の要人全員を、否定することも出来まい。そんなことをすれば、エジプト政府は機能しなくなるからだ。
そこで取り沙汰されているのが、国民の間で最も人気の高い、アムル・ムーサ氏を、大統領候補に立てよう、ということではあるまいか。アムル・ムーサ氏はエジプトの外相時代、イスラエルに対し、一歩も譲らない強固な立場を、取ったことから、エジプト国民の間で大人気となり、それを嫌ったムバーラク大統領によって、アラブ連盟事務総長のポストに、追いやられたのではないか、と言われていた。