トルコのNGO組織が仕立てた、ガザの住民に対する支援物資と、支援者たちを乗せたフロテッラ号を、イスラエルの兵士が公海上で襲撃し、トルコ系アメリカ人1名を含む、9人のトルコ人を殺害した事件は、トルコとイスラエルとの関係を徹底的に、悪化させて既に久しい。
以来、トルコ政府はイスラエル政府に対し、謝罪と死傷者に対する補償を行うよう要求し続けてきた。しかし、イスラエル側はこれを自分たちの、防衛上の権利だと主張して受け付けようとしなかった。
そのため、イスラエルは中東諸国の中で、唯一信頼できる友好国トルコを、失いかけていた。
イスラエルの国際的な孤立は、ガザへの軍事侵攻や、アメリカの仲介にもかかわらず、和平交渉をパレスチナ自治政府と進めるなかでも、ヨルダン川西岸地区への入植を進めてきたために、明確になってきている。
このため、トルコ政府はガザへの支援船、フロテッラ号事件を国連安保理に提訴し、公正な審査を依頼することにした。結論は誰の目にも想像が付こう。公海上でイスラエル兵士が行った、トルコ人殺害行為はどう見ても、許されるものではあるまい。
結果的に、イスラエルは益々国際的な孤立を深め、唯一の擁護者であるアメリカも、苦しい立場に追いやることになろう。アメリカにとっては、この事件は容易ではない。それは、イスラエルがアメリカにとって、重要な国であると同時に、トルコもまたアメリカにとって、重要なパートナーだからだ。
トルコの国連安保理への提訴の動きに、さすがに頑迷なイスラエルも、立場を変えざるを得なく、なってきたのであろうか。最近になって、イスラエル政府は、国際法違反の行為をしたことについて、謝罪は拒否するものの、犠牲者に対する補償については、実行することを受け入れたようだ。
トルコの外交官はトルコにとって、イスラエルは友好国であり、一日も早い公正な解決を、望むと語っている。トルコにとって、イスラエルが重要な友好国であるのは、トルコの兵器体系を整える上でも、修理や整備を行う上でも、イスラエルの支援が必要だからだ。
最終的にどう解決がつくかは、予断を許さないが、双方がある点で、妥協するということになる、気配が見えてきたようだ。