「王制国家も革命の火の粉を浴びるか・サウジアラビア」

2011年2月15日

 サウジアラビアのムフテイである、シェイク・ユースフ・アハマドが、サウジアラビア政府もこのままの状態を放置していたら、チュニジアやエジプトと同じことが、サウジアラビアでも起こると警告した。

 ムフテイとはイスラム法学の、その国で最も権威ある人物に、与えられる称号だが、そのムフテイであるシェイク・ユースフ・アハマドが、語ったというのだから、言葉の重みは相当のものであろう。社会的なインパクトも大きい、と思わざるを得ない。

 サウジアラビアが1970年代に、考えられていたような、石油金満国家では無くなってから久しい。政府は別としても、少なくとも、個人レベルでは、中進国並みか、それ以下の所得に、下がっているのではないか。

 公式データをもとに、サウジアラビアの実情を報告すると、貧困レベル以下の国民の割合は、22パーセントだということだ。つまり、国民の5分の1以上の人たちが、貧困層に入っているということだ。

 そして失業率はというと、公式発表では10・5パーセントだが、実質は20パーセントを超えている、ということだ。つまり、貧困層の割合と比べて考えると、失業率20パーセントの方が、信頼できる数値ではないのか。 

 サウジアラビア政府はこうした貧困から発生する、過激主義者や不満分子を外国に送り出すことによって、問題の先延ばしを、図ってきていたのだ。

 それがアルカーイダであり、その前のアフガン・ムジャーヒデーンであり、最近では、イラクへのジハーデストであろう。彼らは政府の援助を受け、軍事訓練を受け、武器を供与されて、外国で活動してきた、というのが真実であろう。

 しかし、ここに来て、そのからくりをサウジアラビア国民は、知るに至ったのではないか。そうなると、彼らイスラム過激派と呼ばれる者たちの刃は、当然の帰結として、王家に向かうことになろう。

 数年前から連続して起こっている、外国人施設に対するテロ攻撃は、今後、明確に政府や王家の建物と、個人に向けられるようになるのではないか。チュニジアやエジプトが、独裁者を置く共和国であり、王制国家、特に産油王制国家とは、全くその内容を別にする、という考えは、通用しないようだ。

 最近、既に始まっているバハレーンやクウエイトといった、産油王制諸国に加え、サウジアラビアも不安定な状況に、突入して行くのではないか。その時日本はまた、第一次オイル・ショックの時のように、なす術も無く、慌てふためくだけなのだろうか。