「カダフィ大佐様にたてつく者たち」

2011年2月15日


 チュニジアやエジプトで起こった、体制打倒の大衆蜂起の嵐が、アラブ全域に及んでいる。いま一番危機感が高まっているのは、イエメンでありヨルダンであり、バハレーンのようだ。これら以外にも、パレスチナ自治政府やサウジアラビアでも、体制側の不安が広がっている。

 北アフリカのチュニジアとエジプトという、二つ震源地に挟まれたリビアでも、地殻変動が起こり始めているのかもしれない。2月14日、在外亡命リビア人たちが、フェイス・ブックを通じて、2月17日のデモを呼び掛けている。
 曰く、カダフィ大佐とその一族による、独裁体制を打倒しよう、ということのようだ。この場合も貧困と汚職が、うたい文句になっている。

 これでカダフィ大佐の体制も、年貢の納め時かと思いたいのだが、どうもそうでもないのではないか。リビアはチュニジアやエジプトとは異なり、基本的に石油資源に潤っている、豊かな国だからだ。もし、社会的に不満があると、カダフィ大佐は莫大な金を費やして、国民の不満を解消できるからだ。

 これまで、国民の不満が高まると、各組織や地方団体が、自由に必需品を輸入できるようにしたり、政治犯などの家族が騒ぐと、刑務所をカダフィ大佐自身が、ブルドーザーで壊しに出かけて解決している。

 カダフィ大佐の後継と目されている、サイフルイスラーム氏がこれまで何度となく、父親のカダフィ大佐と意見衝突しているが、それは国民のガス抜きにも、なっているのではないか。

 明日ほぼ結論が出る話なので、あまり明確には言いたくないが、今回の在外リビア人の呼び掛けた「木曜日にデモ」の呼びかけデモは、不発に終わるのではないか。

どこかでデモの呼びかけが、不発に終わり、体制打倒劇が止まらなければ、中東世界は混乱のるつぼとなっていこう。打倒の後のシナリオは、どこの国でも描かれていないのだから。

その結果は、大国の中東地域への、再介入の機会が生まれる、ということであろう。案外、アメリカやイギリスはそれを、目論んでいるのではないか、と思えるときがある。

アメリカの作戦、世界戦略の失敗、イギリスの凋落は耳触りのいい言葉ではあるが、それほどこれらの大国が、機能マヒならぬ、頭脳麻痺を起しているとは、考え難いからだ。