「破壊は簡単だが再構築は大変だ」

2011年2月13日

 チュニジアが大衆革命に成功し、ベン・アリ大統領は早々と、国外脱出した。大衆蜂起の勝利といえば、聞こえはいいが、案外、ベン・アリ大統領の場合は本人が嫌気をさして、いたのかもしれない。取る物を取ったから引き際だ、と考えてのことだったかもしれない。

 もちろんベン・アリ大統領の隠し財産は、暴かれることになり、チュニジアの国庫に戻るかもしれない。しかし、一部は彼の手元に残るだろう。それだけでも、余生を優雅に過すには、十分なのではないか。

 ムバーラク大統領の場合は、最終的に責任を感じていたようだ。彼はもう引退しても、いいと思っていたろうが、同時に、自分が引退した後の、エジプト社会がカオス状態に陥ることを、懸念していたのであろう。それを何とか解決した上で、引退したいと、考えていたのではないか。

 一説によれば、ムバーラク大統領の隠し財産は、スイスだけで700億ドルにものぼる、といわれている。もちろん、それは凍結され、最終的にはエジプトの国庫に、納まることを期待したい。

 そして、ムバーラク大統領は大衆蜂起の結果ではなく、あくまでも、自分の意思で引退したい、と考えていたのであろう。実際には、ほぼその形にすることに成功している。

 大分前に、アメリの代表がアラブ首長国連邦を訪問しているが、その時はエジプトに対する緊急援助と同時に、ムバーラク大統領受け入れについても、話し合われていたのではないか。

 今日、エジプトの友人から入った電話によれば、タンターウイ国防大臣は過去2週間、戦争よりも大変な思いをしていたということだ。このエジプト人の友人は、タンターウイ国防大臣と親しい関係にあるが、大臣のところに行って、直接本人から聞いた話だと言っていた。つまり、タンターウイ国防大臣はムバーラク大統領の、面子と責任感とを、果たさせてやるべく努力していた、ということであろう。

 こう考えてみると、エジプトの場合は、相当に煮詰まった状態で、大衆蜂起が完了した、ということではないのか。

 それでも電話をくれたエジプトの友人は、「警察が機能していない。街は無政府状態であり、極めて危険だ。しかも、今回の革命騒ぎの中で、何百人もの凶悪犯が、脱獄している。これから何が起こるか想像もできない状態だ。」と語っていた。

 彼はそのことに加え、政府を強力にリード出来る人物が、現れなければならないとも語っていた。結局、大衆が起こした蜂起は、一時的に大衆革命と呼ばれても、最終的には軍の強力なリーダー・シップが、必要となるということであろうか。

 そうだとすれば、強力なリーダーが現れれば、大衆の反発が起こり、騒動は長期化しよう。また強力なリーダーが現れなければ、無政府状態が当分続き、エジプト社会は危険な状態が、続くということになろう。

 何事も破壊は簡単だが、再構築は困難を極めるということであろう。それは日本でも、現実に起こっているではないか。