「エジプト社会現象日本と大同小異?」

2011年2月 4日


 長期間に渡って政権を維持していた自民党が、民主党の吹かせる風の前に、あっけなく倒れたのは、つい最近のことだ。しかも信じられないことに、その少し前には、小泉ブームが大量の当選者を出し、自民党大勝を記録している。そして民主党も、それと全く同じパターンで勝利した。

 こうした中で誕生した国会議員に、どこまで信を置けるかというと、いささか疑問であろう。つまり、素人集団が国会の過半数に迫る状況を、日本国民は生み出したのだ。これではまるで、発展途上国の議会ではないか、と疑いたくなる。その議会が生み出すものは、何等信頼に値するモノでも、国民の要望に合うものではないことは、自明の理であろう。

 エジプトでも同じような現象が起き、日本でも話題になっているが、日本人のほとんどは、これが自国日本と同じような展開だ、ということをあまり感じていないのでは、ないのかということだ。

 ムバーラク大統領はアメリカの傲慢な、辞任要求を前に「私は辞任することにやぶさかではないが、その後に来るのはカオスだ。」と語ったと伝えられている。その通りであろうことは、現段階でも見え見えだ。

 ムバーラク大統領にとって、いま一番望んでいることは、彼に替わる人物と、じっくり今後のエジプトについて語り、平和裏に権限を移譲することであろう。しかし、受け手が誰もいないのだ。アメリカが希望するムハンマド・エルバラダイ氏()は、ムバーラク大統領との対話を、怖がって拒否している。彼が恐れているのは、ムバーラク大統領でありエジプト国民であろう。そのような人物に、エジプトを担うことが、出来るのとは到底思えない。

 最大反政府勢力と言われるムスリム同胞団も、同じようにムバーラク大統領との交渉を、しようとは考えていない。このグループでさえ、責任を取ることを、恐れているのであろう。

 そのような展開の結果は、ムバーラク大統領を権力の座から、力ずくで引きずり降ろし、出来れば公開の場に絞首刑で、吊るすことであろう。そこまでいかないまでも、名誉ある辞任は望めそうにない。

したがって、30年の長きに渡ってエジプトを統治した、共和国の国王ムバーラクは、ピラミッドどころか、墓の一つも、残すことができないかもしれない、という不名誉な終わりを告げそうだ。

その後には何があるだろうか。述べるまでもないカオスであろう。政権は不安定と不能力で推移し、官僚はそっぽを向き、汚職を続け、そのたびに処刑され、巷では窃盗、殺戮が絶えないだろう。エジプトとエジプト国民がホッとできるのは、10年後、あるいは20年後かもしれない。

 かつて絞首刑に処せられる、イラクのサダム・フセイン大統領の執行者が「地獄に堕ちろ。」と叫ぶと、サダム・フセイン大統領は「いまのイラクが地獄ではないのか。」と問い返した、と伝えられている。エジプトもそうなるのではないのか。