「ヨルダンのデモは国王を肯定するが」

2011年1月22日


 アラブ世界の独裁者たちを震撼させた、チュニジアでの政変は、アルジェリア、エジプト、モロッコ、そしてヨルダンに特に大きな影響を、与えるだろうという予測が、多くの中東専門家によって出された。

確かに、アルジェリア、エジプトではデモ、あるいは焼身自殺が起こり、ヨルダンでは大規模な、デモが起こっている。しかし、ヨルダンのデモは、極めて抑制された、穏健なものであり、暴力行為があったり、商店が破壊されたり、商品が略奪される、という現象は生み出していない。

ヨルダンのデモで、もうひとつの特徴は、物価高、失業、貧困という、デモ発生の理由は、他の国々と変わらないが、シュプレヒコールは「リファイ首相辞めろ」というものであり、決して「アブドッラー国王辞めろ」では無いのだ。

その理由について、ヨルダン人は「われわれはアブドッラー国王を敬愛している。」と語り、アブドッラー国王への敬愛の精神は、彼の父フセイン国王、そして彼の祖父アブドッラー国王、そしてヨルダンのハシミテ王国の祖先である、預言者ムハンマドに繋がる家系の、ハーシム王家に対する、尊敬があるからだ、ということだ。

 確かに、ヨルダンの王家はその通りである。イスラム教の預言者ムハンマドと血の繋がりのある、きわめて高貴な血筋であり、サウジアラビアの王家よりも、格が上なのだ。したがって、その辺の王国の国王や、共和国の大統領とは、まるで別格だということであろう。(モロッコの王家も預言者に繋がる家系)

 しかし、今回のヨルダンのデモのなかで、気になることが二つある。それは取りようによっては、アブドッラー国王の権限を奪う、要求が出ていることだ。デモ隊のなかから「アブドッラー国王は些事に関与するな。」というものと「アブドッラー国王は首相や大臣を任命せず、国民投票で決めさせろ。」というものだ。

 このデモ隊がアブドッラー国王に突きつけた、二つの要求をどう理解すべきか。これをアブドッラー国王の権限を、段階的に縮小していく作戦、と受け取めるべきなのか、あるいはアブドッラー国王に、もっと高い位置から、国家を運営して欲しい、という要望と受け止めるべきなのか。

 もし、首相や大臣の任免権を、アブドッラー国王が手放すことになれば、要望した国民の意思は別に、アブドッラー国王の権限は、確実に縮小することになろう。