レバノンの元首相、ラフィーク・ハリーリ氏の爆殺を巡る犯人捜しが、長い間続いてきた。繰り返しになるが、最初はシリアの犯行とされた。次いでイスラエル犯行説が出、最近ではレバノンのシーア派グループである、ヘズブラの犯行説が語られるようになっている。
ヘズブラはもちろん、犯行とは何の関係もない、と否定しているが、アメリカやヨーロッパ、イスラエルなど、なかでも、アメリカはヘズブラ犯行説を、強調している。もし、ヘズブラによる犯行という方向で、ヘズブラ・グループのメンバーが容疑者として、国際司法裁判所に引き出されることになれば、ただでは済むまい。
サアド・ハリーリ首相には、相当強い圧力がかかり、ヘズブラ・メンバーの引き渡しが、求められているが、ヘズブラ側はもし、サアド・ハリーリ首相がアメリカの意向を受けるのであれば、内戦も辞さない、という立場のようだ。
この緊張した状態を、何とか話し合いによって、解決しようとして、シリア、カタールが仲介に動き、次いで、最近ではトルコとサウジアラビアが、仲介に入った。しかし、そのいずれの仲介工作も、失敗に終わっている。
トルコは仲介するにあたって、この問題はイランとシリアを抜きにしては、成立しえないという発言をしたが、そのシリアやイランをしても、何ともならないのではないか。
シリアとイランは、ヘズブラにとって最大の、スポンサーであると同時に、後見人であったのだが、シリアはヘズブラに対する影響力を、後退させている。それは、ヘズブラにとってシリアが、武器供給ルート(中継地)になっていたからであろうが、それが次第に尻すぼみに、なってきているからだ。
しかし、最近ではイランのヘズブラ支援が激減し、シリアを経由しての武器兵器の供給量が、減っているということだ。加えて、資金面での支援も、激減しているようだ。一説によれば、半減したと言われている。
こうなっては、最後の頼みの綱であるシリアもイランも、あまりヘズブラの立ち場を変更させる上で、役立たないかもしれない。そうなると、レバノンは内戦状態になる、ということになるのだが、それはレバノン国民の誰も、望まないところであろう。
ヘズブラは今後どう動くのだろうか。全く見当がつかない。ただ言えることはレバノンがいま、大爆発を起こす状態に向けて、刻一刻と近づいているということだけだ。そして、今回のヘズブラとサアド・ハリーリ首相との間の、緊張関係を創り出したのは、誰もが想像できる国だということであろう。