木曜日にチュニジアのベン・アリ大統領は重大な発表をした。その発表によれば、ベン・アリ大統領は2014年の大統領選挙には、立候補しないということだ。これは大きなニュースであろう。ベン・アリ大統領は憲法を順守するとし、死ぬまで大統領を務める気はない、とも語っている。
これだけではなく、ベン・アリ大統領は報道の自由、インターネットの自由使用を、全面的に認めるとも語った。つまり、ツイッターやフェイス・ブックを使った政府批判を、受けて立つということであろう。
内務省に対しては、デモ隊に対する実弾での銃撃、を禁止するようにも指示した。既に、デモ参加者の中から、66人の死者が出ていることから、当然の措置といえよう。
そして、広く国民に対し、政治への直接参加を呼び掛け、一部の特権階級だけによる政治を、改善する意思も示している。このため、各種の大統領顧問を、首にしてもいる。
失業と物価高が、今回の暴動発生の原因であったが、物価高については、価格を引き下げるよう指示し、なかでも牛乳、砂糖、パンについては、緊急に実施するよう、指示している。
ベン・アリ大統領がこうした緊急対応をしたのは、今回の暴動がやはり相当ショッキングな、出来事であったからであろう。ベン・アリ大統領の就任以来、23年が経過しているが、今回のような規模の全国的暴動は、初めてのことだという。
ところで、ベン・アリ大統領の反省と、新たな方針の表明について、野党側はどう受け止めているのであろうか。
ナハダ運動(覚醒運動)のガンヌーシ代表は「今回の事態を重く見て、ベン・アリ大統領は辞任すべきであり、議会も解散すべきだった。そして、全ての受刑者に対し、特赦を発表すべきだ。しかし、そのいずれも発表されなかったということは、今回のベン・アリ大統領の発表は、信用に値するものではない、ということだ。」と語っている。
チュニジア人は北アフリカにあって、最も穏健な国民であろう。その国民が立ち上がり、今回のような大規模な暴動を起こしたということは、国内の失業問題や経済状況が、相当悪化していたということであろう。
その大激変を前にして、ベン・アリ大統領は一大方針変換を発表したが、それで事態は収まるのだろうか。そう甘くはないのではないか。