故アラファト議長は何百回、あるいは何千回も「将来東エルサレムはパレスチナ国家の首都になる!」と繰り返した。同じようにマハムード・アッバース議長も、東エルサレムは将来のパレスチナの首都だ、と繰り返している。
しかし、昨今のイスラエルの動きを見ていると、たとえパレスチナ国家が樹立されても、東エルサレムがパレスチナ国家の首都になるとは、到底思えない。東エルサレムもヨルダン川西岸地区と同様に、イスラエルによる破壊と入植地の建設が進んでいるからだ。しかも、故アラファト議長に時代に、アブデスを代理に首都にという構想が動いてきていた。そこからは黄金のモスクも、垣間見ることが出来るからだ、と説明していた。
マハムード・アッバース議長は世界の国々に、パレスチナを国家として承認してくれるように、依頼しているが、ただ紙に書いただけのパレスチナ国家が、実際の国家になることは、程遠い夢ではないのか。
マハムード・アッバース議長が唱えた、パレスチナを国家として承認することに、幾つかのラテンアメリカの国々は応じたが、それらの国が何をしてくれるというのだろうか。
マハムード・アッバース議長の建国宣言と、その承認依頼は、パレスチナ人と世界を偽るための、スローガンでしかないのではないか。
マハムード・アッバース議長の並べ立てる嘘を、一番よく知っているのが、東エルサレムのパレスチナ人を始めとする、パレスチナ人たちであろう。最近発表された世論調査が、そのことを如実に表している。
世論調査の結果では、35パーセントの東エルサレムの住民が、イスラエルの国籍を取得することを望み、30パーセントがパレスチナ国籍を得たいと思っている、という結果が出た。同様に、市民権では39パーセントが、イスラエルを望む、31パーセントがパレスチナのそれを、望んでいるという結果だった。
隣にパレスチナ人が住み着いたら、他の場所に移住したいと答えた、東エルサレムのパレスチナ人の割合は、40パーセントであり、パレスチナ人が隣人になっても、移住しないと答えたのは、27パーセントだったということだ。
この世論調査は、まんざらでたらめではないようだ。最近になって、イスラエルの市民権を取得したいと思っている、東エルサレムの住民が、増加傾向にあるからだ。現在、東エルサレムに居住するパレスチナ人の数は、26万人だが、このうちの5パーセントに当たる、13000人がイスラエルの市民権を、取得している。
過去5年間に、3000人がイスラエルの市民権を申請し、2300人が取得したということだ。2006年の段階では、申請者の数が年間で147人であったものが、2010年には690人に、増加しているということだ。
イスラエルの市民権を取得するということは、イスラエルとガザ、ヨルダン川西岸地区を自由に移動できることと、外国に自由に出かけられ、しかも、出国したからと言って、帰国出来なくなるということはないのだ。しかも、イスラエルの社会サービスを、受ける権利も伴うのだ。
この世論調査は、東エルサレムに限られたことであるが、実際には、これとあまり異ならない意識が、パレスチナ人の心の中に、隠されているのではないか。パレスチナ自治政府の汚職と強権政治、そして空手形のパレスチナ国家建設、どれを取って見ても、そこには将来への希望はないのだ。
しかも、東エルサレムのパレスチナ人たちは、イスラエル人以上に、パレスチナ人そのものを信用せず、嫌ってもいるのだ。こうした状況では、パレスチナ建国構想は、イスラエルによってではなく、パレスチナ人自身によって、内部から瓦解するのではないのか。