「チュニジアでは混乱の度が増している」

2011年1月11日

 年頭にチュニジアの不安定化を、懸念する予測を出したが、早速、チュニジアでは暴動が起こっている。暴動の理由は失業問題と、官僚の横暴にあるようだ。そのことは、はっきり言えば、長期政権を続けている、ベン・アリ大統領体制に対する、不満でもあろう。

 チュニジア政府は暴動が拡大していることに、相当な危機感を募らせ、遂に学校、大学の全面閉鎖を通告している。しかも、それは無期限だというのだから、深刻の度合いが想像できよう。

 チュニジア政府は学校、大学の閉鎖だけでは、らちが開かないとし、大統領自らが、新たな30万人分の就業機会を創る、とテレビで発表した。しかし、政府が突然それだけの仕事を、創れるわけはあるまい。

 チュニジア国内の暴動は、すでに3週間が経過しているが、政府の受け止め方も、相当に深刻だということであろう。チュニジア政府ばかりではなく、ヨーロッパ諸国やアメリカ政府も、今回の事態を重く見ているようだ。

 それは、チュニジアの首都チュニスを始め、中部のサラ、カセリーン、レグエブ市まで、暴動が広がっているのだから、無理もあるまい。問題が深刻の度を増しているのは、暴動の中で警察に撃たれたり、警棒で殴打された結果、死亡した犠牲者たちの葬儀にまで、銃弾が撃ち込まれたことによろう。

 カセリーン、レグエブ市では、葬儀の場でも犠牲者が出たことが、状況をますます、悪化させているようだ。

 報道では、10-13人程度の死者数が、伝えられているが、チュニジアの現場にいた人の話では、犠牲者の数は20人にも、達しているということだ。人数が何人であるかは別にして、これはやはり、ただ事ではない出来事、と言えよう。

 チュニジアの経済状況の悪化は、世界的な経済悪化の、一部であることから、ベン・アリ大統領にすべての責任があるとは言い難いが、やはり、あまりにも長い間、権力の座に就いていた結果でもあろう。

 ベン・アリ大統領は、チュニジア共和国第1代のブルギバ大統領から数えて、第二代目の大統領として、その座を受け継ぎ、1987年以来、現在に至っている。彼の大統領職が長期に渡っていることから、いわばチ、ュニジアの皇帝のような存在に、なっているのであろう。

エジプトの例からも分かるように、大統領職は適度な期限以内に、留めておくのがいいのではないか。