「感心させられたトルコのコメディ・ドラマ」

2011年1月10日


 トルコの友人と夕食を済ました後、もう一人のトルコの友人宅を、訪問することになった。何時ものようにトルコの紅茶がふるまわれ、お菓子やナッツが出ると、突然、友人が「俺の見たいドラマがあるから、悪いが付き合ってくれ。」という。

このドラマはトルコのATV というテレビ会社が、放送しているコメディだった。内容は何処にでもあるような、コメディ仕立てのラブストーリーなのだが、実に面白い。時折友人が内容を説明してくれるのだが、その説明が無くとも、十分に筋立てが理解できるし、笑えるものだった。

アゼルバイジャンから来た若い女性が、トルコで仕事に就こうと思い、偽装結婚を思い立つ。友人の紹介でしかるべき男を、その偽装結婚の相手にしようと思うのだが、もちろん結婚する気はない。

そこで金持ちの軽い女性を連れてきて、アゼルバイジャンから来た女性の代理をさせ、本当の結婚を逃れようとする。金持ちの女性はまんまとこの作戦にだまされて、偽装結婚の代理を務めることになる。

しかし、番狂わせが起こった。それは二人が会ってしまい、お互いに相手を気に入ってしまうのだ。そこで仕組んでいた、代理の女性と男性の夕食をぶち壊しにしようと思い、いろいろと策を練るという筋立てだ。

金持ちの軽い女性は夕食を、自分で料理することが出来ず、材料をそのまま皿に盛り付け、スープは味が濃すぎる。男性は生の材料を食べる気になれず、お腹が空いていないというと、軽い女性は彼にスープだけでも、飲んで欲しいとせがむ。

結果は、当然まずいということになり、軽い女性と相手の男性との関係は、進まない。(トルコの金持ち階級の若い女性は、ほとんど料理をすることが無いし、料理の仕方も知らないということ、を皮肉っている。)

その夕食の後に、二人の関係が進まないように、アゼルバイジャンから来た女性は策を練り、訪問販売員を次から次に送り込み、結果は彼女の考えたようになり、メデタシメデタシというものだった。

番組が終わった後で、友人が解説してくれた内容が、実に振るっていた。この番組はトルコで大人気なばかりではなく、アゼルバイジャンでも大人気だという、高視聴率番組だそうだ。

アゼルバジャン女性役の女優は、アゼルバイジャン語(アゼルバイジャン語はトルコ語の方言のようなもので、アゼルバイジャン人もトルコ人もお互いに、相手の言葉を理解できる)を話しているために、トルコ人の視聴者はアゼルバイジャン語が、もっと身近なものに感じるし、同様にアゼルバイジャン人の視聴者は、トルコ語を身近なものに感じるということだ。

つまり、この番組は笑って楽しみながら、トルコ人とアゼルバイジャン人との関係を、強化する効果があるのだということだ。たかがテレビのコメディ番組と、笑ってはすまされないのだ。

トルコはいま、周辺諸国との関係強化を図り、各国との間でビザ無し交流を実現している。そればかりでは不十分であろう。地理的な国境をビザ無しで撤廃できても、心の国境をお互いに開かなければ、ビザ無しの効果は半減する。そこで考えられたのがこの番組だというのだ。

「お見事トルコ」と賞賛するに値するものだった。感心したのは、コメディのストーリーも役者も、実にレベルが高いということだ。