イスラエルとパレスチナ自治政府が進めてきた、パレスチナ側和平交渉代表であるサエブ・エレカト氏が、これ以上和平交渉をやっても無駄だ、と発言した。その発言そのものは正解であろう。
イスラエル側にはパレスチナが望むような、1967年以前の国境ラインで、イスラエルともう一つの国家パレスチナを、あの場所に建設するつもりは毛頭なかろう。現実にアメリカの仲介で、和平交渉を進めていたときでさえ、イスラエル政府は許可しなかったものの、ヨルダン川西岸地区への、入植活動が続けられていた。
イスラエル政府は、許可をしていないと言っても、実質的には、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ領が、入植地建設により、段階的に没収されているのだから、和平交渉の意味は無かろう。交渉すればするほど、既成事実が積み上げられていく、ということだ。
しかし、ではパレスチナ側は和平交渉を断念して、何をするというのだろうか。残る手段は国連による、パレスチナ・イスラエル問題への強い介入、必要とあれば、国連軍のイスラエル・パレスチナ国境ラインへの派遣と駐留、ということであろうか。
もう一つ残されている手段は、パレスチナ側による武力蜂起だ。ガザ地区ではすでに始められて久しいが、ヨルダン川西岸地区からも、イスラエル領内への武力攻撃が起これば、事態は大変化しよう。
しかし、サエブ・エレカト氏は和平交渉断念と言いながらも、武力闘争を始める用意があることを、全く匂わせていない。そうなると、問題を単に放置しておくに過ぎず、イスラエル側によるヨルダン川西岸地区への、入植活動はますます盛んになる、ということであろう。
パレスチナ側がこうも、無責任な立場を続けるのであれば、ある日、ほとんどのヨルダン川西岸に居住するパレスチナ人が、周辺諸国に追い出される事態となろう。パレスチナ側が形式的に独立宣言をし、独立承認を友好国から取り付けても、何の拘束力もないのだ。
サエブ・エレカト氏が和平交渉を、破棄すると言い出した後、イスラエルの高官が、和平交渉以外にパレスチナの手には、カードが残されていない、と発言しているが、その通りであろう。
その通りというのが現実だ。そうなると、時限爆弾のようにパレスチナ・イスラエル問題は、危険な時にと近づいていく、ということではないか。革命貴族にはイスラエルと、一戦交えるつもりはなくても、飢えたパレスチナの大衆はその限りではないことを、忘れるべきではなかろう。