2011年1月1日未明、エジプトの港町アレキサンドリアで、自動車爆弾を使った、特攻テロが起こった。その犠牲者の数が多かったことと、アレキサンドリアという街の持つ特別な意味が、大きな反響を呼ぶことになった。
アレキサンドリアはエジプトの中にあって、地中海に面していることから、他のエジプトの街に比べ、イスラム色というよりも、自由な雰囲気の強い街だ。したがって、アラブの国々に存在する、宗教的対立も弱く、キリスト教徒とイスラム教徒が、平和的に共存できている街と言えよう。
そこで起こった自動車爆弾テロは、新年のミサに集まっていた、21人のキリスト教徒を犠牲にし、8人のイスラム教徒を含む、79人の人たちを負傷させることとなった。この教会のそばには、イスラム教のモスクもあったことから、イスラム教徒も犠牲となったのだ。
新年のこの爆弾テロは、エジプト政府を震撼させた。このテロ事件が宗教間対立を起こしかねない、危険なものであるからだ。犯行声明は、イラクのアルカーイダ組織が出している。
しかし、何故イラクのアルカーイダ組織が、エジプトのアレキサンドリアで、爆弾テロを行う必要があるのかと考えると、納得のいく説明は見つからない。どう考えてみても、このイラクのアルカーイダ組織の犯行声明は、信じられないということに、なるのではないか。
このアレキサンドリアの爆弾テロについて、イスラエルのネタニヤフ首相は哀悼のメッセージを送っているし、その他の国々の元首も、同様のメッセージをエジプトに送っている。
そうしたなかで、レバノンのヘズブラが出した声明は興味深い。ヘズブラはこの爆弾テロ事件について「イスラエルとアメリカにとって利益だ、」と語っている。それが事実かどうかは別にして、事件には必ずそのことで利益を得るものと被害を受けるものが存在することは確かだ。
エジプトのムバーラク大統領は、このテロは「外国の手によって起こされたものだ。」と語っている。
エジプトンのアレキサンドリアで、キリスト教徒を狙った、爆弾テロが起こったことは、エジプト国内の宗教対立を、煽る効果があろう。そうなれば、エジプト国内では、イスラム教徒とキリスト教とが衝突し、殺しあうという事態が予測できる。
結果的に、エジプトの最大の外貨収入源である観光は、大きなダメージを受けることとなろう。この事件の前に起こった、シナイの観光地での、さめの出現事件も、エジプトの観光ビジネスに、大きなダメージとなっている。
エジプトの今回の事件の真相は、今の段階では分からないが、エジプトが最近、相次いで悲惨な事故事件が起こっている。時代の大きな変革の前には、こうしたことが続くのだろうか。エジプトが一日も早く、安全で世界の観光客を惹きつける、安全な観光国に戻って欲しいものだ。