「イラク新内閣誕生・サウジからのテロが問題」

2010年12月30日

 長い時間をかけて、イラク各派の調整がやっと終わり、イラクは新内閣の結成に成功した。どうやら国内的には、問題が一応決着したようだ。

しかし、イラクにはもうひとつの、不安要素がある。それは、サウジアラビアの送り込んでくる、テロリストによる破壊活動だ。このサウジアラビアから侵入するテロリストたちは、イラク国内の宗派争いを、煽ることを主たる目的としているようだ。

シーア派の要人や施設を対象にテロを行えば、シーア派は当然のこととして、スンニー派に攻撃を加え、スンニー派の施設や要人をテロの対象にすれば、スンニー派がシーア派に対して、テロの報復を行うという状態が、これまで続いてきていた。

こうしたスンニー派とシーア派の戦いが、2003年のアメリカ軍の攻撃以来、今日まで続いているというのが、イラク政府の認識になっている。もちろん、サウジアラビアばかりではなく、イランもアメリカも、宗派対立を煽るためのテロを行っている、可能性は否定できない。

つまり、サウジアラビアにとっても、イランにとっても、アメリカにとっても、イラクの内情が不安定であることに、メリットがあるということだ。

今週の水曜日、イラクの政府要人が、サウジアラビア政府に対し、サウジアラビアからのテロリストの、イラク領内への侵入を阻止するよう、正式に協力を要請した。

もちろん、サウジアラビア政府がテロリストを、イラクに送り込んでいるとは言いがたいが、サウジアラビアの厳格なスンニー派の学者たちのなかには、イラクのシーア派国民を殺すことは、正しい行いだという見解を、口にする者もいるということだ。

このため、民間人の寄付が集まり、イラクに向かう、テロリスト組織が結成され、資金と武器が与えられるようなシステムが、出来上がっているのであろう。それは、アフガニスタンの場合で、既に実証済みのことだ。問題はそうした動きを、サウジアラビア政府が、黙認している点であろう。

サウジアラビアにしてみれば、隣国であるイラクが、自由でシーア派のリードする国になれば、そのこと自体が不安な要素となろう。したがって、シーア派政権を出来るだけ不安定なままに、しておきたいということではないのか。

イラクはサウジアラビアが、イラクにテロリストを送り込んでいる証拠を、握っていると言っているようだ。この事は将来、サウジアラビアとイラクとの関係が、より複雑で危険なものになる、可能性があるということであろう。