「ウイキリークス情報でパレスチナ内部対立激化」

2010年12月22日


 ウイキリークス情報は、どうやらアメリカではなく、情報関連の国や団体を、窮地に立たせているようだ。例えば、サウジアラビアのアブドッラー国王がイラン攻撃を、アメリカの要望した話がそれだ。

 以前、この欄で書いた記憶があるのだが、2007年にガザで起こった、ファタハとハマースの武力衝突の折、ファタハ側はイスラエルに支援要請をしたという話が、今回のウイキリークスの情報で明らかになった。

 もちろん、ファタハ側はこの情報を全面否定し、イスラエルの噂工作だとしているが、そうではあるまい。ハマース側はファタハが2007年にガザで起こった、ファタハとハマースの間の戦闘の時に、ファタハがイスラエル側に対し、ハマースに攻撃をし、潰してくれるよう要請した、証拠があると言っている。

 このウイキリークスの情報については、イスラエルの情報機関のトップである、ユヴァル・デスキン氏が、アメリカの外交官にもらしたものだ、ということだが、イスラエル側もこれをほぼ認めている。

イスラエルの情報機関、シンベトの話によれば、当時、ガザでファタハ側は窮地に立たされており、マハムード・アッバース議長の護衛隊の、重機関銃まで奪われる状況だったということだ。つまり、ファタハはゼロサム・ゲームの状況にあったために、イスラエルに対し支援要請が、なされたということだ。

ファタハつまりパレスチナ自治政府にしてみれば、ハマースの行動は許しがたいものであろう。ハマースはマハムード・アッバース議長の、金銭に絡むスキャンダルを暴露し、パレスチナ自治政府の汚職まみれの実態を暴露している。

パレスチナ自治政府はイスラエルとの、和平交渉を継続している、というポーズをとり続けることによって、諸外国から寄付を集め、それで贅沢な暮しを幹部が送れるようにすることが、第一義となっている。

しかし、ハマース側はイスラエルを認めようとせず、マハムード・アッバース議長の見せかけの、和平交渉を激しく非難している。これでは、元々和平合意をしたくないイスラエルに対し、パレスチナ側に意志の統一が出来ていない、と交渉と合意を遅延させる口実を、与えているのだ。

ガザ地区ばかりではなく、パレスチナ自治政府が本部を置く、ヨルダン川西岸地区からも、イスラエルに対する武力攻撃を、計画しているハマースのメンバーに対し、パレスチナ自治政府は、逮捕と拷問を繰り返し、死者まで出しているというのが実情だ。もちろん正式な裁判などは、ほとんど行われていない。

マハムード・アッバース議長の進める和平交渉は頓挫し、イスラエル人によるヨルダン川西岸地区での、入植が進むなかで、次第にハマースの主張する武力によるパレスチナの解放が、パレスチナ自治政府の主張する、平和的な交渉による解決よりも、大衆の支持を増やしてきているのではないか。それがあってか、イスラエルの情報関係者は、2012年にはマハムード・アッバース議長が、失脚するだろうという予測を出している。