リビアでいま、カダフィ大佐の後継ナンバー・ワンといわれている、サイフルイスラーム氏が突然、カダフィ財団の責任者の立場を捨てる、と言い始めている。この財団はアフリカ諸国、なかでも北アフリカのサブ・サハラ地域の国々に対して、慈善活動をしてきた組織だ。
サイフルイスラーム氏は以前、小泉氏が首相の時代に訪日したが、極めて穏やかで、穏当な言動をする人物だった。その人柄もあってか、彼は世界のリビアに対する、制裁緩和の尽力を尽くし、制裁から解除させることに成功している。同時に彼は、テロリスト集団への支援も止めるよう、国内で動き、これにも成功している。
この財団は、カダフィ財団と呼ばれている通り、カダフィ大佐の肝いりの組織であったわけであり、もうひとつのリビアの外務省的な、存在でもあったのだ。この財団だけではなく、サイフルイスラーム氏はリビアの幾つかの、マスコミの責任者でもあり、新聞社やラジオ局を運営していたが、彼の運営するマスコミのジャーナリストたちが、突然逮捕されたために、それに抗議する形で、今回の辞任発表があったのだ。
こうなると、カダフィ大佐がこの状況に、どう反応するかが問われよう。サイフルイスラーム氏の反対派に立っているのは、カダフィ大佐と革命を起こした時代からの、盟友たちであるだけに、そう簡単ではないようだ。
しかも、彼らはサイフルイスラーム氏以外の、カダフィ大佐の子息を担いでいようから、今回のトラブルは、将来のカダフィ大佐の後継者問題と、直結しているのだ。
カダフィ大佐がいまだに、しっかりと権力を握っていれば、当然どうもめようとも、最終的にはサイフルイスラーム氏の擁護に回ろう。そもそも、サイフルイスラーム氏にしかるべき国家のポジションを与えるように、全国人民大会に依頼したのは、カダフィ大佐その人だからだ。
失礼だが、サイフルイスラーム氏以外の子息たちは、長男を除いて、後継者に的確とは思えない人たちが、ほとんどなのだ。従って、今回の騒動でカダフィ大佐が、最終的にサイフルイスラーム氏を、擁護することが出来るか否かは、カダフィ大佐の現時点での、権力掌握の実態と、彼の健康状態、そしてリビア国内の政治状況を、判断する好材料となろう。
私の希望では、カダフィ大佐が最終的に、サイフルイスラーム氏の擁護に、回るのではないか、と思われる。最近、大分穏健になったとはいえ、カダフィ大佐のリビア国内での実力は、そう低下しているとは思えないからだ。