「米和平仲介断念パレスチナ・イスラエルにどう影響」

2010年12月 9日

  アメリアのオバマ政権が、国際政治上の、重要課題として取り組んできた、イスラエルとパレスチナの、和平実現に向けた努力が、ここにきて、停止状態に陥っている。

 アメリカ政府はイスラエルに対して、和平交渉の前提である、ヨルダン川西岸地区での入植活動を、停止するよう呼びかけてきたが、凍結期限が切れた後、ネタニヤフ首相は凍結を、延長することが出来なかった。

 ネタニヤフ首相が入植活動の、凍結を延長出来なかったのは、イスラエルの政府が、連立で成り立っており、その連立は弱小政党も含む、数の上での極めてデリケートな、構成であったからだ。

 したがって、入植を凍結するよう、ネタニヤフ首相が希望していても、連立政権内の宗教政党の、反発を買う恐れがあり、実行できなかったのだ。このため、パレスチナ自治政府は自分たちの土地に、入植してこられている状態では、和平交渉は出来ないと反発し、結果的に、イスラエル・パレスチナ間の、直接交渉はとん挫していた。

 ここにきて、アメリカ政府は、イスラエルとパレスチナが、あまりにもかたくなであり、仲介のしようがないとして、和平実現への努力を、放置する宣言をしたのだ。

 このアメリカの宣言は、イスラエルにとってもパレスチナにとっても、思いがけないものであり、今後は対応に、苦慮しているのではないか。パレスチナ内部では強硬論者の意見が、前面に出てくることになろうから、ガザだけではなく、ヨルダン川西岸地区からの、イスラエルに対するゲリラ攻撃を、予測せざるを得まい。

 それはイスラエルとあくまでも交渉を続けたいと考えている穏健派のマハムード・アッバース議長の立場を弱め、イスラエルとの和平交渉はますます、進め難くなっていくだろう。反対に、ハマース支持者が増加するものと思われる。

 パレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長は最近、全てを放棄するような発言を繰り返しており、アラブ各国に今後の対応をゆだねる方針のようだ。彼が現在唱えている、パレスチナ国家の樹立への、国際的な支持は、何の意味も持たないだろう。

 イスラエル側もパレスチナ自治政府と同様に、苦しい立場に追い込まれていくのではないか。イランが提供しているといわれる、飛び道具(ロケット弾)による攻撃が、イスラエルの南部地域に及んでいる。

 パレスチナ側の攻撃が、ガザ地区からだけではなく、ヨルダン川西岸地区からも起こり、それに誘発される形で、イスラエル国内のパレスチナ人よっても、実行されるようなことになれば、収拾がつかなくなるのではないか。しかもレバノン南部に陣取るヘズブラは、何時でもイスラエルに対する攻撃が、可能な状態になっているのだ。

 シリアもこうした動きになってくれば、事態を放置するわけにはいくまい。当然のこととして、軍事介入せざるを得なくなろう。イスラエルにとっては、極めて厳しい状況が、発生しているということだ。

 今回、アメリカのオバマ政権が、イスラエル・パレスチナの、和平交渉仲介を断念した裏には、イスラエルとパレスチナ双方に対して、現実を見ろ、ということではなかったのか。危険は、イスラエルとパレスチナにあるのであって、アメリカに及ぶものではないのだから、当事者が一番先に、和平の尊さを実感する必要があろう。