予想通り、というのも馬鹿らしいほど、エジプトの国会議員選挙の結果は、与党の大勝利に終わった。508議席のうちの420議席、つまり、ほぼ83パーセントの議席が、与党議員で埋められることになった。
この選挙については、多くの識者がそれぞれの意見を述べている。元外交官で現在教授を務めている、アブドッラー・アッシャアール氏は、今回の選挙の特徴は「ムスリム同胞団を放逐すること。」「暴力が使われた。」「与党のリーダーはそんだいだった。」とコメントしている。
彼はまた、ムスリム同胞団が2005年の選挙では、20パーセントの議席を獲得したが、今回の選挙では、政府によって小規模政党に、議席が振り当てられた、と語っている。アルワフド党やアッタガンムウ党がそれだ。
今回の選挙は、来年行われる大統領選挙の、前哨戦であると同時に、大統領後継のための、基盤整備の選挙でもあったろう。それはエジプトのインテリの間では、共通の認識になっている。つまり、来年の選挙に向けて、与党は完全に独占体制に、入りたかったということだ。
エジプトの左翼活動家のミラド・ハンナ氏は「エジプト国民は現状に満足している。彼らは与党を受け入れているのだ。」と語り「エジプト国民は選挙結果なんか気にしていない。国民の間では選挙は関心事ではなかったし、投票にも行っていないのがほとんどだ。」したがって国民が怒ったり、抵抗活動を始めるということはあり得ない、と冷たい反応を語っている。
エジプト国民の間で尊敬を集めている、元裁判官のターリク・アルベシュリ氏は、国内の全ての野党や組織は、弱体化させられている。労働組合は弱体化し、崩壊の危機にあり、政党は破壊されている、といった内容のことを語っている。
エジプトの民主化を呼び掛けて、その活動を開始した、ムハンマド・エルバラダイ氏は結局のところ、土壇場で外国に逃げ出した形になり、彼を支持した政党や国民は、騙され、裏切られた形になってしまった。
しかし、ターリク・アルベシュリ氏は希望を、捨てていないようだ。彼に言わせると、エジプト国民は50年間に渡って、政治をボイコットしてきたが、今回は変化が生まれて来よう。それは同一の選挙区に、与党の候補者が並立した結果だ。このことにより、与党内部で変革を求める動きが始まろう。」というのだ。そうあって欲しいものだ。