イランの首都テヘラン市で、去る月曜日の朝、自宅を出て出勤しようとしていたマジド・シャフリアリ教授が爆殺された。彼はイランでトップ・レベルの、核開発の専門家だった、ということだ。つまり、この暗殺事件は、イランの核開発を、遅延させようという、明確な意図の下に、行われたものだ、と断定できよう。
そうなると、テロまでして、核科学者を殺害する、という暴挙に出るのは、イスラエルのモサドであろう、ということになる。イスラエルのモサドは、今年、アラブ首長国連邦のドバイで、パレスチナの幹部(ハマースの武器調達責任者)が暗殺された時も、犯人として名前が挙がっていた。
今回の場合はタイム誌が、イスラルのスパイ機関である、モサドによる手製の犯行、と報じたとイランは伝えている。イラン政府は、犯行の裏にはイスラエルのモサドに加え、イギリスのMI5,そして、アメリカのCIAが関係していた、と報じている。
その暗殺犯3人がすでに、逮捕されたとイランは発表しているが、実際に暗殺を誰が行ったのか、何という名前の人物が犯人なのか、彼の所属する組織は何という名前なのかについては、明かされていない、MKO(ムジャーヒデーン・ハルク組織)ではないかと思われる。
イラン政府の発表によれは、マジド・シャフリアリ教授だけではなく、同日、他の核の専門家フェレイドーン・アッバーシ―氏も、テロに遭っているが、こちらは未遂に終わり、彼と彼の妻が、病院に担ぎ込まれたということだ。
イラン政府はそれ以外にも、テロ計画があったが全て阻止した、と主張している。この暗殺事件で問題になるのは、これがイラン政府の主張するように、イスラエルのモサドやイギリスのMI5,あるいはアメリカのCIAが行ったものなのか、あるいは、イランの反体制のメンバーが行った、あくまでも国内の犯行、だったのかということだ。
国内の犯行説については、少し無理があるのではないか。体制側反体制側に関わらず、イラン国民にとっては、核開発は共通のナショナル・インタレストなのだ。したがって、その最先端の専門家を、イラン国民が暗殺すると考えるのには、無理があるのではないか。
それよりも、外部の誰かによって実行されたテロ事件、と捉える方が論理的であろう。その場合、外部の手が首都テヘランまで伸び、暗殺を実行できるレベルにあるということだ。
被害者が誰であるかを特定し、何の専門家であるかを確認し、彼の自宅の所在を調べ、彼の日常行動のパターンを把握し、爆弾によってテロを行い、成功したということは、他のイランの要人暗殺も、可能だということではないのか。
イランの要人の中でも、アハマド・ネジャド大統領やハメネイ師は、暗殺対象者のリストの、トップに名を連ねているのではないか。