最近、イランのアハマド・ネジャド大統領が、立て続けに常識的でない判断を下した。ひとつは、モッタキ外相が外国訪問中に、外相の地位を剥奪するという発表をしたのだ。もし、モッタキ外相に問題があるのであれば、帰国後に首にするべきであろう。
この点については、ラリジャニ国会議長が、国家の信用を失う行為だ、とアハマド・ネジャド大統領を批判している。全くその通りであろう。しかし、モッタキ外相の更迭は撤回されず、イランの核問題担当である、アリー・アクバル・サーレヒ氏が、後任の外相に納まった。
あえてかんぐれば、長期間に渡って、外国人と接触する地位に、一人の人物を置くことは、次第に外国人の考えに対し、理解を示すようになる、危険性がある、ということなのかもしれない。
あるいは、アラブ首長国連邦で開催された会議に、モッタキ外相が出席していたことが、原因なのかもしれない。そこでは、地域の戦略がテーマで、話し合われていたように記憶する。
もうひとつの、あせりの結果ではないかと思われる、アハマド・ネジャド大統領の判断は、大統領選挙の対抗馬と、彼らを支持したハタミ元大統領に対し、国外に出ることを禁止するという、決定を下したことだ。一説によれば、日本で今年の半ばに開催された会議に、ハタミ師は招かれていたが、外国への渡航禁止命令があり、会議には参加できなかったということだ。
カロウビ師とムサヴィ氏が、今回、外国への渡航を禁止されたわけであり、ムサヴィ氏を投獄するのではないか、という情報も飛び交っている。これに対し、ムサヴィ氏は「イランそのものが大きな刑務所であり、大きな刑務所から小さい刑務所に移ることを、何とも思っていない。」と語ったということだ。
ハタミ師やムサヴィ氏、そしてモッタキ氏は、世界的に知られる人たちであり、彼らの自由が束縛されるということは、イランのイメージ・ダウンに繋がる、と考えるのが常識であろう。
アハマド・ネジャド大統領が、こうまでもあせりを感じさせる、決断を下すということは、彼がいま国内外で、難しい状況にあることを、裏付けているのではないか。イラン国内経済の悪化、それに伴う国家補助の削減と物価の値上がり、アメリカによる経済制裁の強化、アメリカとイスラエルによる軍事攻撃という恫喝、いずれもアハマド・ネジャド大統領にとって、難しい問い題であろう。
イランの報道を見ていると、ガソリンの大増産(経済制裁強化による外国からのガソリン輸入量の激減に対する対策が成功したという意味、)大幅な経済拡大が達成された、といった大本営発表的なニュースが続いているが、どうも信憑性に欠ける。そう受け止めているのは、私だけだろうか。