レバノンのサアド・ハリーリ首相が、遂にイラン訪問を決意し、土曜日に現地入りした。平たく言えば、10月のアハマド・ネジャド大統領の、レバノン訪問に対する返礼訪問、ということであろう。
しかし、サアド・ハリーリ首相にしてみれば、イランは父親ラフィーク・ハリーリ元首相を爆殺した、ヘズブラの後ろ盾なのだ。サアド・ハリーリ首相が親の敵ヘズブラの、後ろ盾であるイランを訪問するのは、当然のことながら初めてだ。
もちろん、ラフィーク・ハリーリ元首相の爆札については、イスラエルのモサド犯行説もあり、まだ明確にはなっていないので、ヘズブラの犯行だと断定することはできない。来年の初めには、ヘズブラの爆殺主謀者が、国際司法裁判所によって、裁かれることになっており、その容疑者の引渡し問題が、レバノン内政を危険なものにしている。
サアド・ハリーリ首相は、なんとしてもレバノンが1975年から1990年まで続いたような、内戦状態にしたくない、という強い願望があろう。彼の父は私財を投げ打って、破壊されたベイルートを、再建しているということだ。
したがって、サアド・ハリーリ首相は苦汁の選択をした、ということであろう。ヘズブラの後ろ盾である、イランを訪問することにより、ヘズブラとの関係改善を行い、内戦を阻止するということであろう。
イランの側にしても、サアド・ハリーリ首相がサウジアラビアと、深い関係にあることから、サウジアラビアとの関係改善に、彼を使うということが、期待できよう。また、イスラエルに対する威圧の拠点としようとしている、レバノンが内戦状態になってしまったのでは、イランの思惑は狂ってしまおう。
したがって、サアド・ハリーリ首相のイラン訪問は、大歓迎というのがイラン側の本音であろう。イラン側では既に、アハマド・ネジャド大統領との会談ばかりではなく、最高指導者ハメネイ師との会談も、予定しているようだ。
イランにとっては、レバノンのサアド・ハリーリ首相の訪問の折に、核開発を認めさせることも、成果となろう。サアド・ハリーリ首相周辺は、既にそのことを既に匂わせている
ではサアド・ハリーリ首相にとっては、どのようなメリットが、イラン訪問にあるのだろうか。サアド・ハリーリ首相のイラン訪問は、イランとの関係の上で、これまでのようなヘズブラやシリア経由、という手順を踏まなくて、よくなるということだ、イランとのダイレクト・チャネルが、出来るということだ。
また、サウジアラビアに対して、サアド・ハリーリ首相はイランとのパイプ役としての、役割を果たすことが出来るようになる、ということでもあるし、イスラエルに対しても、これまでのような単なる、ヘズブラとイランとの関係ではなく、二国家間関係ということが、構築されることにより、より強い立場に立つことができよう。
日本は、このアラブの小国であるレバノンの外交に、大いに学ぶべきものが、あると思えてならない。