イスラエルは長い間、パレスチナやシリア、レバノンとの間で、何時戦争が起こるかわからない、緊張した状態に置かれてきている。
このためイスラエル国民の間には二つの相反する感情が生まれている。ひとつは厭戦の感情であり、一日も早くアラブとの間で和平を結び、平和な生活が送りたいというものだ。
もうひとつは外的に対する恐怖心から異常なほど敵の動きに対して敏感になり、過剰な反応を起こすことだ。トルコの送ったガザへの支援船フロテッラ号に対するイスラエル兵の対応(残虐行為)はまさにその結果であったろう。
そして、もうひとつこうした感情の流れの、心理の変化のなかでイスラエルではとんでもないことが起こり始めている。それは兵役義務の年齢に達した若者たちの多くが兵役逃れをするようになったことだ。
その兵役逃れの方法とはユダヤ教原理主義者たちは戦争を宗教的判断で禁止されているとし、それを政府に認めさせ、彼らのメンバーは兵役義務を免除されるのだ。
兵役逃れを希望する若者たちは、そのユダヤ教原理主義団体であるハレデイに加盟することによって、兵役義務を逃れているのだ。
始めのうちはハレデイのメンバーの数も少なく宗教的理由があることから政府も特例扱いしてきたのだろうが、ここに来てだんだんそうはいかないことに気がつき始めたようだ。
最近では兵役義務の年齢である18歳から40歳の者のなんと50パーセントが兵役逃れをしているというのだ。それは徴兵期間だけではなく、予備役期間についても、当てはまるということだ。
これではイスラエルの軍は、人手不足でまともな戦争、国防が成り立たなくなるだろう。しかもその割合は年々増加しており2020年頃には兵役義務逃れは2010年には9・6パーセントに達し、そして2020年には13パーセントに達するという予測だ。
若者の兵役逃れの傾向は、テルアビブのような大都市では少なく、地方都市の方が多いのが特徴のようだ。
1948年に起こった第一次中東戦争、1956年の第二次中東戦争、そして1967年に起こった第三次中東戦争で、アラブに大勝したイスラエルの勝利の主因は、危機感によるイスラエル国民の、団結の強さだったと思う。しかし、1973年に起こった第四次中東戦争では、辛うじて五分五分に持ち込み、停戦したというのが実情であろう。
昨今、イスラエルは世界中から、冷たい視線を受けるなかで、国民の厭戦気分が広がっていくのでは、国防に不安が生じ、その不安は拡大していく、ということになろう。
1973年の第四次中東戦争での、引き分けに続き、1981年に起こったレバノン戦争では、シリアがいち早く停戦したために、PLOだけを敵に回す形になり、勝利することが出来た。
しかし、2006年に起こった、レバノンのヘズブラとの戦争では、勝利の形は得たものの、イスラエルが精神的には、完全に敗北することとなってしまっている。それは、イスラエル側が考えた被害を、大幅に上回る被害を、レバノンのいち集団に過ぎない、ヘズブラの攻撃で受けたからだ。
イスラエルはこの現状から、出来るだけ早く、抜け出さなければなるまい。それが出来なければ、イスラエルの仇敵である、イランのアハマド・ネジャド大統領が語っているように、イスラエルは地上から、消えてしまうことになろう。
「イスラエル・原理主義で兵役逃れする若者」
2010年11月23日