「過激化が進むアラブ・イスラエル人と現実」

2010年11月22日


  イスラエル国籍を有するアラブ(パレスチナ人)の間では、ある意味で極端な二つの傾向が見えてきている。一方にはワインを飲み、女性と戯れるムスリムの若者たちがおり、他方にはイスラム原理主義の考えを、強めている者たちがいる。

 最近になって、イスラム原理主義者が増加してきているということだが、その原因は幾つかあろう。第一にはイスラエル・パレスチナ間の和平が時間の経過とともに、非現実的になってきていることだ。

ヨルダン川西岸地区やガザ地区のパレスチナ人の、置かれている状況に対する同情もあろう。しかし、だからと言ってイスラエル国内に居住する、イスラエル国籍を有するパレスチナ人たちには何も出来ない。それだけ、すでに安楽な生活に、慣れ切ってしまっていることもあろう。

イスラム原理主義者が増加しているもう一つの理由は、モスクの説法したちが、ヨルダン川西岸地区やガザ地区の同胞を支援すべきである、という過激な説法を繰り返していることにもよろう。このため、一部説法したちはイスラエル警察によって、逮捕されてもいる。

アラブ・イスラエルの政治家もしかりで、過激なパレスチナ連帯の演説をすることによって、支持を強めているということだ。世界的に知られるアズミ・ビシャーラ氏や、アハマド・テイビ氏らがそれだ。彼らはイスラエル国内にあって、アラブコ・ミュニテイを確立していこうと考えている。

しかし、だからと言ってイスラエル国籍を有するパレスチナ人たちが、パレスチナ国家が設立された場合に、イスラエル国籍を捨てるかというと、そうでもない。イスラエルの機関の調査によれば、80パーセントのアラブ・イスラエル人は、イスラエル国籍を保持し続けたいと思っている。

しかし、彼らはイスラエル国民であることに、誇りに思っていないということだ。それでも、イスラエル国籍を他の国々の国籍と比べ、保持したいと願っているということだ。それは屈辱的な部分もあるが、自分たちの父祖の地に住み続けられる、ということからきているのであろう。

他方、イスラエル国家そのものについてはどうかというと、2003年の段階では、75・5パーセントのアラブ・イスラエル人が、ユダヤ人に国家を持つ権利があるとしていたが、2006年には60・5パーセントに低下している。イスラエル国家の存在についても、2003年には81・1パーセントが認めていたが、2006年には59・4パーセントに低下しているということだ。

こうして見ると、イスラエル国内に住むパレスチナ人の、複雑な感情が分かろう。それが彼らの一部をして、イスラム原理主義に走らせる原因でもあろう。