「マグマが広がる中東諸国」

2010年11月21日


 中東諸国のニュースは、今年、イランとアメリカ・イスラエルの緊張に加え、パレスチナ問題が主役を演じて終わりそうだ。アメリカのオバマ大統領はイランに対しては、圧力を弱めることなく、戦争の選択を捨てないままにしてきた。

 パレスチナ問題については、イスラエルとパレスチナ自治政府との仲介役を何度と無く演じ、何とか解決したい、とういう意志を見せてきた。しかし、何の進展も無いままに終わりそうだ。アメリカが要望し続けてきた、ヨルダン川西岸地区への入植を、イスラエルのネタニヤフ首相が凍結する、と発言したことを歓迎したが、実質は何の変化も無い。やがては、パレスチナ人の不満が限界に達し、爆発する時が来よう。

 バハレーンではシーア派国民の、不満が次第に拡大し、デモが頻発したが、選挙の結果は、シーア派に有利なものにはならなかった。この国でも、国民の不満は拡大している。そして、それは湾岸全体に広がることになろう。なかでも、サウジアラビアが一番、影響を受けるのではないか。

 エジプトでも国民の不満は相当なものだ。一見華やかで豪華な、巨大ショッピングモールは、カイロのあちこちに出来ているが、ウインドウ・ショッピングがほとんどで、購買客の姿は見えない、とカイロを訪問している友人から、報告があった。

 エジプトでは物価が値上がりし、国民の間では生活苦が広がっているが、その不満の解消に、ムスリムとクリスチャンとの間で、暴力事件が頻発している。若者の性的な暴力も、街中で広がっているとのことだ。

 リビアでは相変わらず、カダフィ大佐の暴君振りが目立ち、この国では外国との軋轢を創り出すことで、国民の不満の矛先を変えよう、としているのではないかと思われる。リビア内部ではポスト・カダフィの権力闘争が、目立ち始めてきている、という情報もある。改革派のサイフルイスラームと、旧利権派(革命評議会メンバーとその子息たち)との対立は、これから益々、強くなっていくのではないか。

 アルジェリアとモロッコとの関係も、数十年前と何も変わっていない。相変わらず、西サハラ問題で対立関係にある。アルジェリアは西サハラ解放闘争(ポリサリオ)を支援し、モロッコは国連の仲介を頼みながら、何とか解決しようと努力している。

 これらの各国の問題を見ていると、その根底にあるのは「利益」ということになる。国家間では地下資源をめぐり、国内的には権力者側の、富の独占が原因だ。その流れは、あるいは永遠に変わらない人間も性なのかもしれない。アメリカの会議では「利益よりも、社会が必要とすることを始めれば、最終的に利益が得られる、21世紀はそうあるべきだ。という発現があった。まさにその通りであろう