イラクの首都バグダッド市で、10月31日に起こったキリスト教会人質立てこもり事件は、結果的に58人の死者と、75人の負傷者を出して決着した。マスコミが報道するように、教会内部は、まさに血の風呂(ブラッド・バス)状態の、凄惨なものであったろう。
このテロ事件は、イラクのアルカーイダ・グループによって、起こされたものであるが、イラクのクリスチャンやイスラム教徒には、受け入れがたい理由であったようだ。そもそもの理由は、エジプトのコプト教会が、イスラム教徒の女性を逮捕し、投獄したことに対する報復だった、という説明がなされているからだ。
イラクの国民の間からは、エジプトで起こったことが、何故こんなひどいことを、イラクで起こさせるのか、と非難が寄せられている。
イラクのアルカーイダ・グループは、このキリスト教会立てこもりのなかで、中東地域すべてのキリスト教施設、センター、機関を攻撃の対象とし、キリスト教リーダーや信者も、無差別にテロの対象として行くことを、宣言している。
一体これは、何を意味しているのだろうか。何故これだけ大規模な犠牲を、生む事件が起こるのだろうか。そして、その結果、実行犯の所属するグループは、何を手にしたいというのだろうか。
残念なことに、これらの疑問に対する答えは、現在の段階では一つとしてない。現在の段階で言えることは、何の成果も彼らにはもたらされない、ということであろう。それでは、何がこの中から生まれてくるのかといえば、キリスト教徒によるイスラム教徒に対する、不安と敵意だけであろう。
結局、今回の事件は、現在広がる世界的な、キリスト教徒対イスラム教徒の対立を、煽るものであったということではないか。
この状況を前に、ほくそ笑んでいるグループが居よう。それが誰なのかは、の場で述べるまでもなく、分かる人には分かろう。
しかし、そうした陰謀は、結果的にブーメランのように、自分に帰ってくることを忘れてはなるまい。その結果とは、国家の体制が崩壊するのか、あるいは、国家そのものが、消滅するのかだ。