イスラエルの観光大臣が、自国民のトルコへの旅行を、ボイコットするよう呼びかけた。それは、イスラエル人にとって、トルコが危険な場所だからということが、主たる理由ではない。
つい最近出された、トルコのレッド・ブックの内容に対する、不満が主たる原因であろう。このレッド・ブックというものは、トルコの政府と軍などで構成する、国家安全会議が出す、自国の安全対策のための、法律のようなものだ。
この最新版では、ギリシャはいまだに警戒すべき対象国に含まれているが、シリアやアルメニアは外れている。今回はイスラエルが、警戒対象国に含まれることになったのだ。
しかし、イスラエル国民にとって、トルコは中東地域唯一の友好国であり、イスラエル国民が安心して旅行し、滞在できる国になっている。そのため、多くのイスラエル国民が、不動産をトルコのアンタルヤを始めとする、地中海沿岸部に持つに至っている。
イスラエル国民にとって、トルコは万が一の場合の、最も近い安全な逃避先として、認識されているのだ。アラブ諸国のなかで、エジプトやヨルダンは、イスラエルとの間に、和平条約を交わしているが、戦争のような緊張した状態になった場合、その国の国民が、イスラエル人に危害を加えない、という保証はないのだ。しかし、トルコについて言えば、その心配はほとんど無いということであろう。
イスラエルは今回出されたレッド・ブックのなかで、敵対的な国のなかに自国を含まれたことに対し、何らかの反応を示す必要があったのであろう。トルコはレッド・ブックのなかで、中東地域の安定を脅かす国として、イスラエルを名指ししたからだ。
他方、イスラエルとトルコの専門家学識経験者などは、両国の代表を送り戦略会議を行っているが、そこでは、イスラエルとトルコは両国関係が、修復できない決定的な段階には、至っていないとし、双方が話し合うことにより、関係は改善しうる、という結論を引き出している。
外交上は何処の国の場合でも、一定の現象に対し、一定の範囲内で、反発して見せる必要があろう。その真意を正確に理解することが、国際関係外交関係上、最も必要とされる能力であろう。