「NATOミサイル配備受け入れたトルコ」

2010年11月25日

 以前、NATO(アメリカ)が希望する、トルコへのミサイル配備について、トルコは受け入れるだろう、という予測を書いた。それが最近になって、現実のものとなったようだ。

 トルコがNATOのミサイル配備を、受け入れるだろうと考えたのは、いたって単純な理由だった。もし、トルコがこれを拒否するようなことがあれば、欧米諸国はトルコが、完全に欧米離れをし、イスラム世界あるいは、東方に舵を切り替えた、と判断されたことであろう。

 トルコはNATOの軍事演習で、イスラエルが参加することを拒否したことから、多くの憶測が飛んでいた。そうしたなかで、もしトルコがミサイルの配備についても、断るようなことになれば、実質的にNATOの加盟国としての、認識は薄まってしまったことであろう。

 このミサイル配備で、トルコにとって問題だったのは、イランとの関係に、悪影響を及ぼすのではないか、ということだけであったろう。したがって、トルコはNATOのトルコ国内への、ミサイル配備の問題が持ち上がった時点から、この問題をイランとの間で、調整してきていたのであろう。

 イラン側にしてみれば、トルコにミサイルを配備されることの危険は、二つであろう。一つは、核兵器開発が進んでいる、と欧米が判断して、核兵器製造施設に対し、攻撃を加えるということであろう。もう一つは、イランがイスラエルなり西側の国を、先制攻撃する場合であろう。

 イランに核兵器を開発する、意図が無いのであれば、ミサイル攻撃をされる確率は、低いものとなろう、この場合、アメリカやイスラエルが強引に、平和利用目的の核開発を、核兵器製造に向かっている、と判断した場合は別だが。

 イランが欧米諸国やイスラエルに、先制攻撃をかける可能性は、皆無であろう。したがって、イランとすれば、トルコへのミサイル配備が、イランを名指しで行われるものでなければ、外交的にも国内的にも、大きな問題とはなるまい。

 事実、トルコはミサイルの配備にあたって、トルコ国内に配備されるミサイルは、特定の国に向けられるものではない、ということを条件にしたようだ。そしてトルコは、周辺諸国がトルコに対して、攻撃をしてくるとは考えていないし、トルコもまた攻撃を仕掛ける、意図が無いことを明言している。

 もちろん、このトルコの立場は、あくまでもイランに向けたメッセージであることは、述べるまでもあるまい。トルコの細やかな外交努力が、NATO にとっても、アメリカにとっても、イランにとっても、トルコへのミサイル配備を、受容しやすいものにした、ということであろう。実質的に、このミサイルは、展示用で終わるのではないか。