「ラース・ル・ハイマ首長の死と今後の不安」

2010年10月28日


 日本人でラース・ル・ハイマという国名を知っている人は、ごく一部であろう。ラース・ル・ハイマはアラブ首長国連邦の構成メンバーである、首長国の名だ。この首長国はペルシャ湾の出口である、ホルムズ海峡に隣接していることから、日本にとっても重要な意味を持つ国だ。

この国の首長(国王)が死去し、いまラース・ル・ハイマを含むアラブ首長国連邦全体に、不安定な状況が生まれ始めている。それは、死亡した首長の後継問題をめぐる争いが、今後、激化する危険性があるからだ。

死亡したのはシェイク・サクル・カーシミー首長だが、その後継になるのは、シェイク・サウード皇太子であるのが当然だ。しかし、彼はシェイク・サクル・カーシミー首長の次男であり、以前、長男のシェイク・ハーリド王子が、皇太子の地位にあったことに、今回の後継問題は起因する。

長男であるシェイク・ハーリド王子が、何故、皇太子の地位から外されたのかは定かでないが、現在の皇太子であり、首長職後継者であるシェイク・サウードとは、腹違いの兄弟だ。

シェイク・ハーリド王子は2003年まで、皇太子の地位にあったが、更迭された後、外国に居住しているということだ。その彼が、父親であるシェイク・サクル・カ-シミー首長の死亡後に、自分こそが首長職を継ぐ、正統性を持っている、と言い出したのだ。

シェイク・ハーリド王子は、アラブ首長国連邦の法に従えば、自分に後継者になる権利がある、と主張しているが、アラブ首長国連邦を構成する、6つの首長国は全てが、彼ではなく、弟のシェイク・サウード皇太子の首長継承を、支持しているということだ。

こうした問題が起こった場合、必ず外国の一部が、この問題に介入し、問題を益々、複雑化させる傾向がある。今回の場合も、多分に外国の干渉や、関与工作が予測出来よう。

問題はラース・ル・ハイマ一国に留まらず、アラブ首長国連邦全体に、及ぶ危険性があるということだ。その結果、ラース・ル・ハイマの面するホルムズ海峡が、何らかの影響を受けることになれば、日本への石油輸送にも、影響が及ぶということになろう。

あるいは、そこまで行かなくても、不安要因が保険を値上げさせることも、ありえよう。相場は変化を求めるために、小さい出来事にも、敏感に反応する傾向がある。そのことを頭に入れておく、必要がありそうだ。