「後退するドバイ・台頭するオマーン」

2010年10月12日


 アラブ首長国連邦の一部をなすドバイは、中継貿易国として、繁栄を極めてきた。ドバイは中継貿易だけではなく、アラビア半島全体の出先オフィスとしての、機能を発揮してきてもいた。このため、欧米の企業のなかには、ドバイに本社を移す会社まで出てきていた。

 しかし、ドバイ・ショック以来、同国の経済は悪化の一途をたどっている。元々が石油の豊富なアブダビに対抗して、進めた非石油産業による繁栄だったが、そこには相当な無理があったのであろう。室内温度が50度を超えるような地域で、リゾートを販売することなどは、始めからその結論が分かっていたであろう。

 ドバイが後退する中で、最近、オマーンの台頭が目立ち始めている。オマーンはアメリカの海軍に対し、港湾の使用を認めている国であり、少量ではあるが、石油も産出している。

 この国の強みは、ペルシャ湾の出口ホルムズ海峡を、抑えていることであろう。加えてア、ラビア海インド洋にも面しているのだ。つまり、海洋に向かって、開かれた国家というイメージが強い。

 大分前に、オマーンを訪問した折に驚いたのは、この国のスーパーではビニール・カーテンで仕切られてはあるものの、豚肉を売っていたことだ。アルコールは述べるまでもなく、まったく問題無く販売されていた。

 今回、オマーンは第13回目の、イランとの合同会議を開催したが、その中でイランのモッタキ外相は、オマーンとの協力の下に、中央アジアに対する中継貿易を、拡大していきたいと述べている。

 そのことは、イランがドバイに代わり、オマーンを中継貿易の拠点にする意向を、表しているということだ。オマーンのマクブール・スルタン通産大臣も、石油、発電、運輸、中継貿易で、イランと協力したいと述べている。

 オマーンはこれ以外にも、イランとの歴史的に良好な関係を生かし、いま、1年以上に渡って、イランで投獄されている、アメリカ人不法入国者の、釈放にも努力してもいる。